願いは叶うことなく 先の対戦で、二人も大切な人を亡くした。 目の前で砕け散っていくMA――…MS…。 『必ず帰ってくる』 男は皆嘘つきなのよ。 わかっていても、引き留めることなんて出来ずに、嫌な予感だけが残る。 こういう女の感は当たってほしくないのだけれど。 叫ばずには、嘆かずにはいられない。 我慢なんて、出来ない。 他のクルーもいるというのに、彼の名前をありったけの声を振り絞って叫んだ。 前が霞む。 それでも、前にいる艦を倒さなければ、何も変わらない。 彼が守ってくれたことも、無駄になってしまう。 彼が……だなんて。 まだ認めたくなくて、顔を敵に向けて睨み上げる。 すると、ぽっかり空いた無重力の空間の中に漂う、破片。 私は、艦長だ。 『ローエングリン……っ、射てぇええ――――!!!!』 ナタルは、あの数個の脱出ポッドの中に、ちゃんといるのかしら。 そんなことがふと、頭をよぎった。 一個の脱出ポッドは……フレイさんが乗っていた脱出ポットは… クルーゼとか言う男にやられてしまった。 彼が、いつも呟いていた人の名前。 回収した他のポットのクルー達の言うことには、ナタルはまだあの艦に。 しかも、身体を張ってアズラエルを。 悲しみ、怒り、憎しみ。 私はその連鎖がいかに繋がってはいけないかを知っている。 地球連合軍を恨んだとしても、無駄だということを知っている。 遺品は、残された制服と、いつも使われていたマグカップ。 あと、細々としたもの。 それだけ。 パイロットスーツに着替える部屋のロッカーに入っていた制服を引きずり出して、また泣いた。 それと同時に転げ落ちた帽子を拾い上げる。 つばが黒光りするソレに、またも彼の顔が浮かんだ。 2年経って、だいぶ気持ちに整理がついてきた。 それなのに…デストロイを倒した時に出会ってしまった。 彼によく似た人。 いや……。 彼だ。 ムウ・ラ・フラガだ。 似合いもしないのに髪を伸ばして。 顔には、2年前のであろう傷。 でも、彼は何も憶えていなかった。 何故生きていたのか、それすらも聞けない。 生きていたという喜びもそのままに、周りが真っ暗になる。 絶望に、包まれる。 涙を堪えることが出来なくて、部屋を飛び出してしまった。 ミリアリアさんが肩に手を置いて、支えてくれる。 彼女の優しさに触れながらも、涙は止まらなかった。 こんなにも辛いなんて。 振りきれたと思った途端に現れて、嬉しくて、でも、何も憶えていないなんて…。 信じられない。 きっと彼ではないんだわ。 そう思いたくても、心のどこかで期待している。 同一人物であることを。 記憶を取り戻すことを。 いつもの彼の…冗談だということを…。 「ムウ・ラ・フラガってあんたの何?」 私は笑えているかしら? ちゃんと いつものマリュー・ラミアスでいられているかしら? 私は、艦長だ。 この船を先導しなければならない者が、しっかりしてないなければ、皆に迷惑をかけてしまう。 そう言えば、こんな風に私が自分を追い詰めている時、貴方はいつも私を支えてくれたわね、ムウ。 キラ君やカガリさんの視線を感じる。 ……辛いのは…皆同じ それでも、貴方は約束を守ったことになるのかしら? 『必ず帰ってくる』 違う人格になってしまったようだけれど。 それでも構わないと思った自分に 涙が出た。 END |
後書き マリューさん…彼女は今も一生懸命に生きていると思うのです。 これからも苦労するんでしょうか? キラやアスランに幸せになって欲しいのはもちろんなのですがマリューさんにも幸せになって欲しいです。切実に。 種で一番好きなノーマルカプはフラマリュです。 ほのぼのしてていいですよね…vV あ、でもアスメイもすてがたい… これはPCにも載せていたものです。 イザアスでないものも増えていきそうな予感が… まな 05.05 |