赤焼け夕焼け雲の色 狭い部屋の中、後ろのベッドにはムウ・ラ・フラガ――ネオが眠り、キラの目の前のベッドには、負傷したアスラン・ザラが眠っていた。 アークエンジェルに運ばれてきた当初、アスランの怪我は更にひどく、キラもショックを受けた。 だが、カガリがパニックになり、ミリアリアがそれを落ち着かせているのを見ているうちに、キラの目に溜まりかけていた涙は、不思議と引いていった。 自分がここで涙を見せることはいけないと、キラは感じたのだ。 「落ち着いて…カガリ、アスランは…きっと大丈夫だから」 「っ…キラっ」 渦巻く感情を押し殺してカガリに言うと、カガリはキラへとすがりついてきた。 ミリアリアがカガリの後ろへと寄り添い、声を投げかけている。 「大丈夫よ、カガリさん!コーディネーターなんて、そんな簡単には死なないんだから!」 ミリアリアの偏見としか言えない。 だがそれでも心持ち楽になる言葉に、カガリは頼りない笑顔を向ける。 キラも、笑顔を見繕うのに苦労していた。 「あぁ…そうかもな」 それから一日経ち、アスランの身体からは生命維持装置が外れたが、カガリは泣いてばかりいた。 時折、思い出したかのように泣き出すカガリを宥めるのはミリアリアの役目であり、今キラが病室で一人なのも、それが原因だった。 「……アスラン…」 ネオは眠っているかのように一言も声を出さない。 仕切りも閉められたまま。 キラの双眸に涙が溜まるのに、そう時間はかからなかった。 「っ…アスラン……!」 前自分がお世話になっていたベッドに、今はアスランが眠っているという現実。 しかも、あの赤毛の女の子の傷が浅かったの見ると、庇ったのであろうキラとは比にもならないキズの重さ。 「やっぱり君は…女の子に優しいね…」 微笑みながら言うが、押し込めていた涙は、止まることを知らずにキラの目に溜まり、シーツに落ちた。 その一つが、アスランの頬に落ちてしまい、キラは慌ててそれを拭う。 疲れきって眠っているアスランを起こすことを、キラは望んではいなかった。 そのキラの望みを奪うかのように、突然アスランが眉をしかめた。 「……!!」 アークエンジェルに来てから一度も開かれなかったその目が弱々しく開かれていく。 久しぶりに見た、その緑の瞳を、キラは綺麗だと感じていた。 視界は、ぼやけていたけれど。 「っ……アスラン」 「………キ……ラ…?」 何故自分がここにいるのか、何故キラがここにいるのかすら判別のつかない顔でキラを見上げるアスランの頬にはまた、キラの涙が落ちた。 温かい涙を感じながらアスランは、今見ているものは幻想なのではないかと思っていた。 なぜならキラは――…。 思った途端に、アスランの頬を涙が流れた。 「……しん………だ……っ」 途切れ途切れに言うアスランの言葉をかき集めて、キラは言葉を組み立てる。 だが、キラには、それがわからなかった。 ――お前は死んだはずじゃなかったのか? ――俺は死んだはずじゃなかったのか? どちらなのだろうかと考えて、とりあえず後者にすることにしたキラは、アスランを安心させるように微笑んだ。 「大丈夫だよアスラン…君は生きてる」 アスランが言いたかったのは前者であり、キラの言葉は思っていたものとは違ったけれど、安心するには充分だった。 自分は生きている キラも……生きている 「……キ……ラ…」 アスランがキラの名前を紡ぎ、終始無言でそれぞれの喜びに浸っていた。 キラから顔を近づけ、久しぶりに唇を合わせた。 しばらくぶりの感触を感じながら、名残惜しくキラは離れる。 今はただ、幸せを感じていた。 END |
後書き アスキラ…なのでしょうか? まなは、種はアスキラ 種デスはキラアス派です。 この話は種の時のキラに想いを馳せて書いたものです。 今の黒いキラ様も大好きですよ♪ この話もPCには載せてあります。 これから増えるのはPCにはないものばかりになるかと思います。 まな 05.05 |