初めに


これは、イザとキラとシンがアスをめぐって…
という話です。
今回はまな一人の力ではなく、sano様(レモンさん)とのリレーメールで産まれたものです。
sano様のみ、お持ち帰りOKです(笑)

初めはギャグを基本にしていましたのに、いつのまにかシリアスに。
最後は…という感じで(汗)
少々描写などがわかりにくいかもしれませんが…。
この話を一言で言えば、『シン、かわいそう…』です(何)

では、そんな本編をどうぞ。



アス争奪戦
―アスランの左にくるのは俺(僕)だ!!―




「アスラン、こっちこっち」

「えっ、キラ?でも、あの二人が…」

「いいから、ね?」

「ぁ、ああ…」

イザークとシンが、アスランがいなくなったことに気付いたのは、それからしばらくしてからだった。

「あれ!?アスランがいない!!」

「なんだとぉ!?くそっ!やられた!!」

「いったい誰が…!!」

「キラ・ヤマトだ!いつまで経っても俺のアスランに固執して…」

「ちょっ、アスランは俺のですってば!!」

「何をぉ!?」

キラがほくそ笑んでいたのは言うまでもない。



軽快な音を立てて開いた扉を、キラは驚きもせずに見た。
予想通りの二人組に、ふっと笑いをこぼす。
ベッドに腰掛けるキラの傍らには、キラに髪を撫でられながら眠るアスランの姿。

「何か用でもあるのかな?」

――そんな所につっ立って

余裕の笑みを見せるキラに、走って来たのか、少々息を乱したイザークとシンはさらに眉根を寄せた。

「貴様…アスランに触るな!!」

「そうですよ!!俺のアスランに気やすく触らないで下さい」

「ふふっ…君たちはおかしなことを言うんだなぁ……」

「何だと?」

今やイザークの目に映るのは、情事の跡を色濃く残したまま眠るアスランと、さもおかしそうに笑うキラだけ。
シンの問題発言にも突っ込みを入れずキラに言葉で噛み付いた。

「アスランは僕のだよ?君たちのじゃない」

当然のように言い放ち、アメジストの目を細めるキラ。
口元は笑っていても、目には残虐な光が宿っていた。
見る者が恐れおののくような――…

「貴様ぁあ!!!」

「ん……っ」

「「「!!」」」

イザークがつかつかとキラに歩み寄り、胸ぐらを掴んで無理矢理立たせた瞬間。
アスランの目元が動いた。

「…キラ…?」

「あ、アスラン起きた?」

まるで二人がいないかのようにアスランと会話をするキラに、イザークとシンの怒りはどんどんと高まっていく。

「貴っ様ぁ〜、聞こえているのか!!さっさとアスランから離れろぉ!!」

「そうですよ、あなたに俺のアスランに触る権利なんて‥」

「あるんだよ、シン」

キラの冷たい瞳がイザークとシンに向けられる。

「さっきも言ったでしょ?アスランは君達のじゃなくて、『僕の』だって」

「…キラ‥?一体何言って…」

自分の知らないキラの一面を見たアスランの顔に、恐怖が垣間見える。
ピリピリとした緊張感に包まれた部屋。
何故このようなことになっているのかもわからずにキラを見上げれば、そこにはアスランの知らない幼なじみの顔。
シーツのみを纏い、腕で上半身を支えて周りを見れば、イザークとシンまでもが険しい顔をし、キラと睨み合っている。
唐突に、いつもの笑みを浮かべてキラがこちらを向き、そのギャップにアスランはビクリと肩を震わせた。

「アスラン…アスランは僕のだよね?」

「は…?」

疑問譜ばかりが浮かび上がるアスランに触れようとしたキラの腕をシンが掴んだ。
キラが冷めた目でシンを見返し、二人はしばし無言で睨み合う。
完璧に二人だけの世界へと入り込んでしまったキラとシン。
この隙にとイザークは、しゃがんでアスランに声をかけた。

「イザーク…これは……?」

「アスラン、貴様は誰が一番好きだ?」

「え…?」

唐突にイザークから紡ぎ出された問いに、アスランは間の抜けた声を上げる。
誰が――…と聞かれれば、答える者の名は一つしかない。
アスランの中に、答えはすぐに浮かんできた。
それでも、その人以外…シンやキラに身体を求められれば、拒むことなどできないでいることもあり、即答することが出来ない。
みるみる赤くなっていくアスランを、イザークはただずっと見つめている。
傍らではまだ、シンとキラが睨み合ったまま動かない。

「お‥俺は……」

「アスラン、俺は貴様の本当の気持ちを知りたい」

イザークがアスランの瞳を真っ直ぐに見つめてくる。
アスランはそれに耐えられなくなって、目線をそらした。

「アスラン…」

「イザーク……。俺は‥俺が好きなのは……」

アスランが意を決して自分の気持ちを告げようとしたとき、キラの冷たい瞳と目が合った。
いつからアスランとイザークの方を見ていたのかもわからない。
シンはまだキラの腕を掴んだままだ。

「ねぇアスラン、アスランは誰の名前を言おうとしているの?まさか、今君の目の前にいるおかっぱ君とかって言わないよね?」

そのキラの言葉に、イザークの眉がピクリと刎ね、アスランはビクリと身体を震わせた。
のけ者にされてしまったシンは、割って入るのを諦めたようにキラの腕を放し、イザークとキラの二人を睨んでいる。

「キラ……俺は」

「君は僕のでしょ?アスラン。ほら…早く言いなよ」

アスランの顎を取って無理矢理にこちらを向かせる。
恐怖の入り交じったエメラルドの瞳は、キラの加虐心を煽るだけだ。
イザークがアスランの身体をシーツごと抱き締めて引き寄せ、キラの手からアスランを奪った。

「ちょっと、邪魔しないでくれる?」

キラの冷たい視線に、アスランの瞳には涙が溜まり始めていた。
アメジストの瞳にいつもの輝きはなく、ただ、暗い。
その闇が見つめているのは、アスランではなく、アスランの後ろにいるイザークだというのに、アスランは恐怖感を拭い切れなかった。
後ろから自分を優しく抱き締めてくれているイザークの、温かい腕を両腕で抱え込むと、イザークはさらに腕に力を込めてくれる。

「俺は貴様の邪魔などしていないが?」

「イザーク…僕はあんたが嫌いだ」

「キラ…!?」

「はっ、ありがたいな。俺も貴様のことは嫌いだ」

「…イザーク……」

キラは忌々しそうに舌打ちし、困ったようにイザークを見ながらもどこか愛おしさを含んだアスランの声に、さらなる苛立ちを覚えた。

――アスランに触るな

「キラ、俺は……イザークが‥痛っ…!?」

「貴様…!!」

「アスラン…!?あんた…自分が何したかわかってんのか!!」

言葉を続けようとするアスランの頬を、キラは加減もせずに平手で殴った。
アスランはあまりの衝撃に呆然としている。
イザークは、とっさに守ることの出来なかった自分に舌打ちし、傍観を決め込んでいたシンはキラの胸ぐらをつかんだ。
キラは涼しい笑みでアスランを見ている。

「キ、キラ‥?なんでっ」

アスランの瞳が驚愕で見開かれた。
だが、そんなアスランとは対照的に、今のキラからは冷徹さをも感じる。
胸ぐらをつかまれているにもかかわらず、どうやらシンのことは眼中にないらしい。

「アスラン、僕言ったよね?君は僕の物だって」

「そんな!」

「なのに君はさっき何て言った?」

「アスランは俺の事が好きだといったんだ」

そのとき、キラとアスランの会話にイザークが割って入った。
再び、キラの闇のようなアメジストの瞳が後ろのイザークへとむけられる。

「キラ……何でイザークをそんな目で見るんだ…?」

恐々と聞くアスランに、イザークは驚いたように名前を呼んだ。
キラはイザークから目線を外し、アスランに移す。
シンが胸ぐらを掴んでいる為に、見下ろされているようになる。
イザークの腕の中でアスランの身体がまたビクリと動いた。

「何でって?アスラン。当たり前じゃない。そいつは僕から君をとっていこうとしてるんだよ?」

「そ、そんなことないっ」

アスランがキラの言葉を否定する。
そして、そんなアスランにイザークは優しく微笑んだ。

「俺はキラのことが好きだ。それは嘘じゃない。でも…やっぱりイザークの方が好きなんだ」

「アスラン…」

キラの様子をうかがいつつ、それでも最後までそう言い切った後、アスランは耳まで顔を赤らめ、イザークはアスランに回している腕にさらに力をこめた。

「イザーク、痛いってば」

「ああ、すまない」

イザークとアスランのまわりには微笑ましいような空気が漂っている。
が、一方のキラとシンからしてみれば全くもって面白くない。

「あぁもう見てられないっス」

シンはぶっきらぼうに呟き、キラの胸ぐらを離して部屋の扉へと歩み寄る。
イザークは余裕の笑みを見せてシンを見送り、キラは面白く無さそうにシンを見た。
アスランはきょとんとしてシンの名前を呼ぶ。

「シン…?」

「キラさんには任せられませんけどね、イザークさんならいいですよ」

乾いた音を立てて扉が開き、逆光にシンの身体が包まれる。
目を細めるキラは無視し、シンは続けた。
アスランは恐怖を抱いた目でキラを見ていた。

「これ以上アスランを殴ったら許しません」

シンはその紅い目をきつく細めてキラを睨み、部屋を出ていった。

「これで後は貴様だけか」

イザークがキラに対して冷たく言い放つ。

「そうだね」

キラのほうも、相変わらずの笑顔で先ほどまでシンにつかまれていた部分のしわを伸ばしてた。
そして、そんな二人の様子を、ようやく状況が理解でき始めたらしいアスランが見守っている。

「あーあ。にしても、僕はだめだけどイザークなら良いなんて…。あとでシンをしめに行かないと」

キラがこぼした言葉に、アスランはぞっとする物を感じた。

「大丈夫だ。貴様にはもう痛い思いはさせない」

そんなアスランの心境が伝わったのか、イザークが安心させるようにアスランに囁いた。

「ねえ、いつまでそうしているつもり?」

アスランの方に向き直ったキラとイザークとの間で睨み合いが始まる。
シンがいなくなった後の部屋に、再び沈黙が訪れた。

「…貴様には関係ないことだろう?」

「えと…」

「関係多有りなんだよねぇ…アスランが汚れる」

キラがアスランの腕を引くが、イザークはアスランを離さない。
アスランから抗議の声が漏れた。

「痛い!二人ともやめろ!!」

イザークが慌てて腕の力を抜いた瞬間、アスランの身体はイザークの腕の中からスルリと抜け、キラの手中に納まった。
突然に立ち上がった為に、アスランの内股を何かが伝う。
それに小さく声を洩らしたアスランに、キラはほくそ笑んだ。
イザークは舌打ちし、立ち上がる。

「アスランを離せ」

一方アスランの方も、先ほどまでの事を思い出したのか、顔を赤らめて本気でキラから逃げようとする。
そして、どうやらもがいていたアスランの肘が鳩尾に入ったらしい。
キラが短くうめき、アスランに回している腕の力が弱まった。

「うっ」

「キラ、ご、ごめん。別にそんなつもりじゃ…」

だが、キラに誤りつつも、アスランはちゃっかりイザークの腕の中へと戻っている。

「アスラン…そんなに僕の事が嫌いなの…?」

キラが目を潤ませながらアスランを覗き込んだ。
アスランはキラの涙にかなり弱い。
アスランは一瞬ためらうような表情でイザークの方を振り返ったが、意を決して再びキラの方へ向き直り、頷いた。

「あ、でも、別に…嫌いではないんだ。ただ、イザークの方が好きっていうか…」

「と、いうわけだそうだ」

言葉を言い終わった後、顔を真っ赤に染めてしまったアスランを愛おしそう見つめながら、イザークがキラに対して言う。
イザークの表情からは、今度はアスランを殴らせないという強い意志が窺えた。

「ふーん。そう」

そんな二人の様子に、どうやらキラはもうあきらめてしまったらしい。
つかつかとドアの方へと向かっていく。

「あ、そうそう。アスランに1つ良い事教えてあげる」

ドアから出て行こうとする瞬間、キラはアスランのほうへと振り返った。

「歩いてる時は後ろに注意しといた方が良いと思うよ。…今、警告はしたからね」

「貴様になんかやるものかっ!!」

「ふふっ。どうかな?それじゃ、ま、ごゆっくり」

やっとの事でキラが部屋から出て行き、後には怒りで顔を赤くしたイザークと、訳がわからずおろおろするアスランだけが残った。

「…さて」

イザークがアスランを見ると、アスランは耳まで赤くなっていた。
そんなふとしたことにすら、可愛らしさを感じる。

「え、と…シャワーに行ってもいいか?」

おどおどと言うアスランの腕を掴み、イザークは優しく微笑んだ。少し、何かを企んでいるようだったが。

「折角あいつが気を効かしてくれたんだ、無下にするのは失礼だろう?」

「え…あ、ちょっと!」




その後、シンがレイに慰められているのをルナマリアが目撃したとか…




END




後書き


はちゃめちゃですみません(汗)
どちらがどこを書いたかはわからないようにしてあります。
書いてる時は楽しかったですよ♪かなり。
sano様!またご一緒致しましょうね!
では。


まな
05.08.29