目は語る


A-side
二、三日振りに訪れる、通い慣れた図書室。
本独特の匂いに頬を弛ませながら、アスランは本を抱え、そこに入った。
からっぽの返却箱に本を置き、いつも腰掛けている席へとリュックを下ろす。
六人掛けの大テーブルだが、使う者は滅多にいない。
アスランがいつも使うその机は、あまり人気のない、暗く静かな所だからだ。
アスランの他には、部屋には二、三人しかいなかったが、皆別々の机を使っていた。
全部で十一ある机が、実際は四つ程度しか使われていないのが勿体ない。
ざっとそれを見渡し、アスランは行き慣れた本棚へと向かった。
今日は時間もあるし、少しここで読んで行こうかと考えながら、機械工学の棚の前へと辿り着く。
その棚の隣は、様々な国の本を、よくここまで集めたなと感嘆してしまいそうな、民族学の本の置かれた棚だった。
何で隣が民俗学なんだとか、こんなジャンルの本、この学校で借りる奴いるのかなとか思いながらアスランは、目の前の本から目線を外し、ちらりと横を見た。
そこには何時の間にか人が立っており、本棚に手を伸ばしているところだった。
だが、その人の瞳もこちらを見ている。
癖毛であるアスランには羨ましく映る真直ぐな銀髪を携えて。
自然と目が合ってしまい、アスランは急いでその躊躇なく射抜いてくる青い瞳から眼を逸らせた。



Y-side
いつもは一週間ごとに訪れる、通い慣れた図書室。
だが、いつもよりも早く借りていた本を読み終わってしまい、手持無沙汰なのもあれだと、イザークはここに来た。
早くも数冊の本が入っていた返却箱に本を入れ、常に使っている机へと向かう。
普段ならば誰も使っていない、人気のない大テーブルには、珍しく先客の荷物があり、イザークは驚いた。
リュックの置かれている席の向かいにイザークも荷物を下ろし、まぁいいかと思い本棚に向かう。
図書室に行くからと友人に帰ってもらっていたイザークには、夕方、特別用事もない。
閉室時間ぎりぎりまで居ても大丈夫かと考えを巡らせ、すでに見慣れた民俗学の本棚の前へと立った。
その棚の隣は、わけのわからない機械経路を説明している本を詰め込んである、機械工学の棚。
何故隣が機械工学なんだとか、だいたい、この学校にこんなの借りる奴いるのかとか思いながらイザークは、めぼしい本を見付けて手を伸ばした。
だが、ふと隣に気配を感じ、目の前の本から視線を外してちらりと横を盗み見る。
そこには何時来たのか人が立っており、イザーク同様、ちらとこちらを見ていた。
闇色の、少し癖のある艶やかな髪を綺麗だと思う。
だが、自然と目が合ってしまい、彼は慌てて翡翠の瞳を逸らせてしまった。




END




後書き


出会いがメインです!
続きは、ご要望があれば書かせていただく…という気分ですが、あるにはあります。
微妙なところで終わらせるのは趣味じゃないですので、時間が出来れば書くかもしれません。ご要望がなければ。

アンケートにご協力していただき、ありがとうございました!


まな
05.12.21