見つからない答え いつもと変わらない朝の風景。 各々が自ら朝食のトレーを取って席につき、仲間達と机を囲んでわいわいと食している。 若きザフトレッド達が、四人掛けの席に勝手に一つ多く椅子を持ってきて、五人で食べるのはアカデミーの頃からの習慣なので誰も咎める者はいない。 大概その椅子に座るのはラスティで、アスランの前にはイザーク、その隣にはディアッカ、アスランの隣でディアッカの前にあたる席にはニコルが座っていた。 そして今日は、他の三人よりも早く来てしまったイザークとアスランが、いつも通り机を挟んで先に座っている。 不機嫌そうに眉を寄せたイザークが、ちらりと、無表情でフォークを動かすアスランを見た。 ふん、と気に食わないと言いたげに鼻を鳴らした彼に気付いていながらも、アスランの眉はぴくりとも動かない。 そんな二人がつつく今朝の食事は、二つの目玉焼きとサラダ、そしてパン。 机の上には様々な調味料が置かれ、自由に使ってもいいことになっている。 アスランの手が不意にそこへと伸び、その中からソースの瓶を手に取った。 その行動が気になったのか、イザークはフォークにレタスを刺したまま動かない。 そして、アスランがソースを目玉焼きにかけた途端、彼は眉を吊り上げて思い切り立ち上がった。 ガタン、と凄まじい音が響き、周りからの目が一気に集中する。 それでも、微動だにしないアスラン。 「なっ、貴様!アスラン!目玉焼きにソースをかけるとは何事だ!!」 「…は…?」 びしぃっ、と指を突き付けられながらの信じられないと言う言葉に、ようやく顔を上げる。 訝しげに見てくる彼の視線に再び鼻を鳴らし、イザークは勢い良く席に腰を下ろした。 そして醤油の瓶を取りアスランに示し、怒鳴ろうとした途端、他のザフトレッド達三人が食堂に入ってくる。 そのことでほっと息を吐いた一般クルーの空気を感じて、ディアッカ、ラスティ、ニコルは顔を見合わせ二人の元へ急いだ。 もちろん、引っ掴むようにトレーを受け取って。 しばし黙って視線を合わせていたイザークとアスランも、三人が続々と席へ着けばそちらへと意識を向ける。 だが、口を開いたラスティの一言で、イザークの視線は戻ってしまったが。 「で?どうしたんだよ、二人とも」 「どうもこうも…イザークが突然…」 アスランの言葉に、やっぱりか…という共通の念を持って三人がイザークへと視線をやれば、彼はわなわなと口元を震わせている。 そしてダンッと机を叩き、驚いてこちらを向いたアスランに言った。 「目玉焼きには醤油だろうがぁ!!」 「…ソースだ」 「「「………」」」 怒鳴り散らしながら、鳴れた手つきで醤油をかけるイザークを見るアスランの目は、対抗心に燃えている。 そのままぎゃあぎゃあと言い合いにもつれ込んでしまいそうな二人に、これに乗じなければという顔をしてラスティが身体を乗り出した。 その手には、この食堂には置かれていないはずの、ポケットサイズのケチャップ。 「いや、ケチャップだろ?」 「何だと!?」 おそらくマイケチャップなのだろうそれを、指先で摘んで二人に示す。 食い付いたのはイザークだけだが、アスランとディアッカも驚いた顔をしていた。 そんなことには全く動じないニコルが、ごそりとポケットを探り何か小さな瓶を取り出す。 少しドロリとした感のあるそれに、四人の視線が集中した。 一番近くにいるアスランは、少しばかり仰け反り身体を離そうしている。 「僕なら、アマルフィ家特製のコレですね…かけてみます?」 「…い、いらん」 「わ、悪いが遠慮しておくよ」 チャプ、と瓶を軽く揺らしながら、イザークとアスランにそれぞれ微笑みかけるニコルに、二人は慌てて首を振る。 ラスティまでもが口元をひくつかせて成り行きを見守っている中、ディアッカは何時の間に取ったのか、塩胡椒の入った容器を持っていた。 そしてそれを、何を言うでもなくさらさらとかけていく。 「(塩胡椒だろ…)」 そんなディアッカの後ろから、ひょこりと覗いてくる影があった。 ミゲルだ。 そんな彼に気付いたラスティが、顔を引きつらせたまま笑みを作って片手を上げた。 その表情に首を傾げながらも、ミゲルは五人の中に割って入ってくる。 「何の話してるんだ?お前ら」 弾かれたように顔を見合わせたイザークとアスランが、ばつが悪そうに視線を逸らした。 それを見て隣でくすりと笑ったニコルがミゲルへと向き直り、口を開く。 「目玉焼きに何をかけるかで…少し」 「はぁ?何だそりゃ…ガキの喧嘩か?」 盛大に息を吐いて肩を竦めるミゲルに何も言い返せないのはイザークだ。 アスランは悔しげなその様子を、ちらりと視線を寄越して垣間見る。 「だいたい…目玉焼きにはマヨネーズだろ?」 その後、いつもつるんでいる仲間がやってきていなくなってしまったミゲル。 一人、そうですか?なんて言い返していたニコルと違い、他四人は複雑そうな表情だった。 END |
後書き やってしまいましたー… 一周年ということで、自分の書きたいネタを思う存分書いてやろうじゃないか!という結果です(笑) フリーにしたいと思いますので、煮るなり焼くなり好きにして下さい。 皆様、本当に今までお世話になりました! こ、これからもよろしくお願い致します(礼/こら) では、またお会い致しましょう。 まな 06.08.23 PS.日記にて名前を挙げさせていただいた方には押しつけさせていただきますので、各自ご確認下さいませ(微笑) 下はコピーボックスです。自由にお持ち下さい。 転載される際には、 Mail、もしくはweb clapにて一声お声をお掛け下さいませ。 まなの名前さえ入れて下されば、リンクの有無は問いません。 |