流されて流され尽くして


一緒に夕食を取って、それぞれシャワーを浴びて一日の汗と疲れを取って、ベッドに入った途端にこれだ。
早急に伸びてきた腕の中に、閉じ込められる。
これではダブルベッドの意味を成さない。
真ん中で互いに身体をぴたりとひっつけているのだから。
そのことに対しては不満はないが、合わされた唇が徐々に深くなるのはいただけない。
表皮を掠め唇を潤していくだけだった口付けが、熱く熱を持ったものに変わる。
背中をぎゅっと抱き寄せられて、食むように口付けられた。
無駄とわかっていながら胸元を軽く押し、差し込まれた舌を緩く噛んでやる。
ぴくりと細められた青い瞳が、何をするんだと訴えてきた。
だが、それをじっと睨みながら噛んだ箇所に舌先で触れれば、それはたやすく絡め取られてしまった。

「っ…‥ん…」

「……は‥アスラン…」

合間に低く名前を呼ばれ、じわじわと身体が熱くなる。
絡めて、吸っては離れるそれに熱を求めて、自ら舌を触れ合わせた。
途端、唇を離す意地悪な奴。
不満たっぷりな顔をしてやれば、何が可笑しいのかくつくつと笑った。

「…俺、明日任務」

「……一回だけ」

とりあえず制しておくが、こんなことは無駄だと知っている。
するりと頬を撫でていく手を取って、腹いせにその指先を甘噛みした。
ぴく、と反応を示したことに気を良くして、歯を立てたまま舌で触れる。
逃げるように引かれた手を追おうとしたが、身体を組み敷かれてしまい断念した。

「…そう煽るな」

「…一回以上したら、許さないからな」

「…………わかっている」

視線を逸らせて了承を示す姿は、確実に期待を裏切ってくれそうだ。
咎めるように見上げていると、する‥とパジャマの中に手が入ってきた。
薄い生地の下で、骨張った手が動く。
こうなってしまっては、抵抗するのなんて無駄な足掻きだ。
諦めてシーツを緩く握ると、未だかろうじて被っていた羽毛布団をばさりと捲くり上げる音。
冷たい空気に触れながらも、肌に感じる手の体温さえあれば気にならなかった。

「…っ…‥」

「声を…聞かせろ」

片手をシーツから離し、肘を曲げ腕で顔を覆う。
顔と言うよりも目元しか隠せていないが、恥ずかしさだけは毎度どうにもならない。
耳元で吹き掛けるように囁かれ、びくりと身体が跳ねる。
タイミングを合わせたように胸の尖りを摘まれ、唇から熱が漏れた。
指先でくにくにと弄ばれる度、そこで生まれた熱が身体中に散っていく。

「…ぁ、は…っ‥」

身を捩り堪えようとするが、爪先はシーツを乱すだけで踏ん張りが効かない。
耳朶にちゅ、と口付けられて、そこが一気に熱くなった。
押し潰すようにされたと思えば、指先で上下に翻弄されて痛くなってくる。
弄られていないほうの尖りが、触って欲しいと訴えていた。
腕の隙間からちらりと顔を見れば、酷く意地の悪い笑みが見える。
そのままじんじんと痛む胸を触るのは止まり、腰回りを囲むゴムにその指がかけられた。
ずり、とズボンは簡単に下に下げられ、一緒に下着も取り去られていく。
羞恥を誘うようにゆっくりと行われていくそれに、顔が熱くほてっていくのを感じた。

「…アスラン。もう濡れているぞ、貴様の」

「っ…うるさい…ッ…」

じっとしつこいぐらいに見つめられて、半ば立ち上がっていたものが更に力を持つ。
恥ずかし過ぎて、どうにかなってしまいそうだ。
強く目を閉じて頬をシーツに押し付けると、いきなり足を抱えられて息を呑む。
左右に広げられて露になった蕾に、突然しなやかな指が触れた。
ぐっ、ぐっと入り口を押すだけの指先に、知らず身体が震えてしまう。
その指がどれほどの熱を持って中を刺激してくるのか、嫌になるほどこの身体は知っていた。
薄く瞳を開け、触るだけ触って顔を覗き込んでくるそいつを睨み付ける。
入れろ、と唇で示すけれど、それではお気に召さなかったようだ。

「…言え。アスラン」

「…っ…入、れろ‥」

いたたまれなくなって再び目を閉じると、目元に触れてくる唇。
それに吐息を漏らした途端、蕾の入り口ばかり刺激していた指が、中に押し入ってきた。
濡らされていないそれに引き攣るような痛みを感じはしたが、唇を噛み締めて耐える。
ぐぃっと更に深くまで差し入れられて、身体が強張るのを感じた。

「っ、く…‥ぃ…ッ…」

「……我慢しろ」

酷なことを言う奴だと思うが、口には出さない。
こいつも我慢して慣らしてくれているのだろうから。
そのまま突き入れたいと言われて、あまりにもその時の瞳が切羽詰まっていたから、了承してしまったことがあった。
あの時の痛みは忘れられない。
身体を半分に裂かれるような、痛さだった。
内蔵を押し上げてくる圧迫感が気持ち悪く、快感など得られない獣のような交わり。
ただ揺さ振られて、熱い肉塊が体内を行き来するのを感じていた、あの時。

「何を考えている」

「…っ、あぁ…ッ!」

突然、指が二本入れられ中を刔るように動かされる。
気もそぞろだったことに、些か苛立っているようだ。
性急に意識は引き戻され、内壁を引っ掻いていく爪に身体がびくつく。

「ゃ、め…っ、痛‥い」

「……‥」

自然と溢れた涙がシーツにじわりと染み込み、そこに触れる頬の熱さを確認させられた。
なるべく締め付けないように息を吐くが、訴えなど気にかけていないような指の動きに息が詰まってしまう。
きつく内壁で締め付けてしまい、鋭い舌打ちが空気を裂いた。

「っ、ひぁ…ッ ぃ、イザ…ク…」

乱暴に自身を掴まれて、身体が跳ねる。
戸惑いを感じ目蓋を押し上げ、腕の下から見上げると、酷薄な笑みが見えてぞくりと背筋を何かが走った。
震えすぎて掠れた声で名前を呼ぶと、耳元に近付けられた唇から漏れた言葉に目を見開く。
嫌だと首を振るけれど、徐々に強くなる自身への圧迫と、中を擦り上げていく指に喘ぐしかなかった。

「いゃ…っ、…あァッ」

「嘘を言うな。痛い方が好きなくせに」

「ぁ…は‥ぅ、ぅあ…ッ」

また、何か嫌なことでもあったのだろうか。
苛立つこととか。
もしかしたら、キラに会って何か言われたのかもしれない。
いたぶるような抱き方をするときは、いつもそうだ。

俺は、お前しか見ていないよ。イザーク。

そう言いたかったのだが、また意識が違う方へ向いていたことに気付かれてしまい、中で指を折り曲げられた。
根本を締められてしまった自身の先から、先走りが漏れる。
それを見て鼻で笑われ、再びじわりと涙が滲んだ。
曲げたままの指で浅いところを抜き差しされ、より深いところが疼く。

「イザ‥ッ、あっ…」

「…奥に欲しいのか?」

自然と揺れ始めていた腰を、見られてしまった。
勝ち誇ったような笑みを口元に浮かべ、視線が落とされていく。
ふるり、と身体を揺らして強くシーツを握ると、不意に引き抜かれる指。
何事かと思い、荒い呼吸を繰り返しながら瞳を見つめる。
そして自身からも手が外され、顔を覆う腕とシーツを掴んでいた手をそれぞれ掴まれた。

「ぃ、ザ…」

そのまま顔横で手首をシーツに縫い付けられ、ゆっくりと乱れのないパジャマを纏った上体が倒される。
詰められた距離で、間近で見つめられた。
鋭く尖った氷を突き付けられたようで、身がすくむ。
途端に貪るように口付けられ、熱い吐息を共有しながら舌を絡め合った。
表面のざらつきを擦り付け、時折口付けの角度が変えられる度に隙間から空気を貰う。
手首は痛いほどに締め付けられ、薄らと開いた目蓋の間から見える氷晶の瞳は、涙で歪んでいた。

「っ、は…‥」

「ん、‥は、はぁ…っ」

唇と唇の間を唾液が伝う。
二人分の荒々しい呼吸が熱を帯び、一気に肺に空気が流れ込んだことで、溜まっていた涙が次々と瞳から落ちていった。
目を閉じて、口付けの余韻に浸る。
不意に頬に触れた温かいものが、涙を拭っていった。

「…しょっぱいな」

ぽつりと零された言葉に小さく笑ってやる。
解放された手首にはきっと、くっきりと手形が付いているだろう。
目を開けて再び上を見ると、頬を両手で包まれてちゅ、と唇を重ねられた。
ねっとりと絡み付くような雰囲気を残して離れたそれが、また開く。

「…挿れてもいいか」

「……‥聞くな。バカ」

いつもなら怒る言葉に対しても、微笑を浮かべて流す様が悔しかった。
首に腕を回してしがみつき視線を伏せると、両足を抱えて広げられる。
いつ取り出したのか知れない自身の先端が秘部に当たり、今更ながらに羞恥を覚えた。
どくどくと波打つ心臓が、これから起こることに期待を馳せているようで、ぐっと腕に力を込める。
それが合図になったのか、割り裂くようにして下肢が圧迫され始めた。
何度体験しても慣れないこの感覚に身震いさえして、懸命に喉を反らせながら息を吐く。
ただでさえ適当にしか解されていない内壁は、勝手に熱い楔を拒否していた。

「ぁ、く…‥ッ!ぅあ、は…っ」

「っ…おい、力を抜けッ」

思っているよりも強い力で拒絶してしまっているのだろうか、イザークは顔を歪めて腰を揺らしている。
浅い箇所を行き来する熱い自身が、内壁を擦りじくじくと新たな熱を産んだ。
知らず、きゅ、と更に締め付けてしまい、やってしまったと思いながら息を吐こうとするのに、イザークの表情は少し和らぎを見せ始めていて、戸惑う。
それどころか、強まる圧迫感。
徐々に押し上げられる身体に、深くまで自身が押し入って来ているのだと、ようやく理解した。

「ぁ…う…‥イザ‥」

競り上がってくる感覚に押されるように、ぽろぽろと涙が落ちていく。
歪んだ視界に映るのは確かに彼なのに、酷く不安になったのは何故なのだろう。

「…すごいぞ、貴様の中…俺のを包んでいる」

わかるか?と言いながら、少し空いてしまった身体の距離を詰めてくる。
それにともなって挿入の角度が変わり、違う箇所を圧迫され、首に回した腕に力を込めてやった。
睨むようにイザークを見れば、ほらまただ…と呟き繋がっている秘部の淵を指でなぞってくる。
小さく声を上げながら背をのけ反らせた俺の唇を啄んで、ずるりと自身を引き抜いた。
突然無くなった質量に、内壁が震えたのが自分でもわかる。

「っ、ゃ…ぁあッ!」

それに気付いたのかニヤリと意地の悪そうな笑みを浮かべたイザークに、再び勢い良く突き上げられてびくびくと身体が震えた。
深くまで入り込んでくる熱い塊が、柔らかい粘膜を掻き混ぜていく。
その度にぐちゅぐちゅと響き大きくなっていく音が、俺の息を上げさせた。
二人分の熱い吐息が部屋に満たされていくのに、彼奴は口元に笑みまで浮かべていて、悔しさがつのる。
だが、そのまま何度か抜き差しを繰り返され、何も考えられなくなっていった。

「んぁ…っ、あ、はぁッ」

腰を捩り快感を逃がそうとしても無駄なことで、イザークのパジャマに擦れた自身はだらしなく勃ち上がり、先走りを滲ませている。
もうそろそろイきそうだと思った途端、一番奥のしこりを押し上げられた。
一度抜け出ては再びそこばかりを攻め立てられて、身体が跳ねる。

「…あ!ゃあ…っ、イザ‥も、やめ…ッ!」

身を捩れば捩るほど、逃がさないと言いたげに強く身体を揺さ振られた。
両腕が、浮いた背中とシーツの間に回されて、身体をぴたりと合わせたまま体内を熱が行き来するのを感じる。
イザークも限界なのか、中でその太さが増したような気がした。

「ぃ、イザ…イザ‥クぅ…っ」

「っ…アスラン‥愛している…」

耳元で囁かれた言葉にこくこくと頷いて返せば、達したいという波が一気に押し寄せてきた。
大きく動いた腰によって思いきり奥を叩かれ、我慢できずに放ってしまいそうになる。
耐えようとしたのを気付かれたらしく、しこりを先端でぐりぐりと押された。

「んゃ、や…!ぁああ…ッ!」

ついに放ってしまった白濁がイザークの腹を打ち、少ししてから背中を震わせた彼の熱が注がれる。
腹の中に感じる熱いそれを纏わせて、力を失った自身が引き抜かれた。
そのまま二人でどさりと倒れ込み、荒い息を整えようと息を吐く。
ばくばくと胸の中心を叩く心臓の音があまりにも大きくて、俺はそっと目蓋を伏せた。
汗をかいてしまったからシャワーを浴びなければと思いはするのだが、開きっぱなしだった足を労るように元に戻され髪を梳かれると、眠気が急に襲ってくる。
それでも何とか目蓋を押し上げてイザークを見ると、未だに熱を孕んだままの、愛しげに細められた瞳と目が合ってしまった。

「アスラ」

「駄目だからな」

熱っぽく名前を呼ばれ、それを遮るように先に返答を返せば、そいつは拗ねたように唇を尖らせる。
一度だけだという約束はしていたし、未だ腹の中に留まり続ける熱を出さなければとも思うが、朝からある任務に支障を来たすわけにはいかないし、何よりも眠ってしまいたい。
この程度ならば、そう簡単に腹を壊すこともないだろうと高をくくって、俺は枕を引き寄せた。
少し引き攣る身体を動かしてそれに頭を乗せ、追いやられた布団を引っ張ったところで、上から聞こえる溜息。
隣へと寝転んできたイザークの、腕の中に納まって、暖かくして朝まで眠った。


少し強引なところも、たまに見せる意地悪も、全て愛情表現なんだとわかっている。
朝起きたら、その寝顔に言ってやろう。
俺もお前を愛してる、と。




END




後書き


皆様!七万打ありがとうございました!
このお話はフリーに致しますので、是非持って帰って下さい。
ほとんど…と言いますか全てにおいてヤっていますが(汗)
今回はアンケートを取り忘れるという失態を犯してしまいましたが、気に入っていただけると嬉しいですっ
では、失礼致します(礼)


まな
06.12.25


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