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心の涙 手を突いた箇所から、きし、と小さな悲鳴が上がる。 それは、微かに揺れたベッドから聞こえたものだ。 そこに横たわるイザークは、その前から目を覚ましていた。 目蓋を伏せて、覆い被さってくる相手の体温を感じる。 頬へと降ってきた唇の感触に口角を上げ、イザークは上に跨がる人物へと手を伸ばした。 彼の腕に首をがっちりと捕まれ、侵入者は身体を浮かせられない。 「夜這いか?アスラン」 押し上げられた目蓋の下から見えた青い瞳が闇に浮かび、侵入者であるアスランは驚いた。 動かせない身体に舌打ちし、彼は何とかして逃れようと身を捩る。 だが、イザークがそれに乗じるように身体を浮かせた為に、力の行き所を失ったアスランは少しバランスを崩してしまった。 その隙を捉えて、イザークは互いの位置を入れ換える。 ぼすっ、と音を立ててベッドに叩き付けられ、アスランの顔が歪んだ。 「……は、なせ…」 「…言え。何の用でここへ来た?」 もがく彼の両手首を押さえてシーツに縫い付け、イザークは口角を上げる。 何故アスランがこの部屋へ来たのかは、彼もよく知っていたからだ。 すでに息の上がっているアスランの両手を一つに纏めて片手を空け、その手で内股を撫でていく。 びくびくと下肢を揺らす彼の中心に指先を移して形をなぞりながら、イザークは綺麗に笑って見せた。 「は、ぁ…っ…イザ‥」 自身をイザークの手に擦り付けると言うよりも、臀部をシーツに擦り付けるようにアスランは腰を揺らす。 気にしていなければ普通に動くことも出来ていたのだが、イザークを目の前にしてしまってはそれも無理と言うものだ。 ぎこちなく揺れるアスランの身体に目を細めて、イザークは彼のスラックスのベルトを外す。 そのベルトで掴んでいた手首を縛り、頭上に上げて抵抗出来ないようにした。 必要以上の強さで縛られた手首に革が食い込み、アスランの顔が苦痛に歪む。 そこまでしておいてイザークは、今までとは打って変わり優しい手付きでアスランの頬を両手で包み、ゆっくりと顔を寄せて唇を啄んだ。 「ん‥…」 「……ほら、言えば少しは楽にしてやる。言え、アスラン」 一度啄んだだけで少し濡れた彼の唇を親指でなぞり、イザークは優しく囁き掛ける。 揺らぐ翡翠の双眸が、沸き上がる熱を逃がすように視線を逸らした。 「…中の…取って、ほし…」 恥じ入るように小さな声で紡がれたアスランの言葉は、途中で途切れる。 イザークが彼の唇を塞ぎ、よく出来ましたと茶化すように言ったからだ。 少しは楽に、という言葉通り、イザークはアスランのスラックスを下着と一緒に脱がせ始める。 カッと音が立ちそうな程にアスランの頬が赤らみ、肌も追うように朱を浮かばせていた。 関係ないとでも言いたげイザークは、そのままアスにランの両足を広げて持ち上げる。 「イザーク…ッ!」 「…ピンクのコードが生えたまま…か。動かさなかったのか?と言うよりも、そうだな。リモコンが無ければ動かないか」 「ッ、ひ…ぃぅ…っ!」 アスランの身体の奥まで押し込められたものが、突然鈍い音を発しながら戦慄いた。 バイブと言うよりもローターに近いそれに身を捩り、イザークの手中に納められた薄いリモコンを取り上げようと手首を捻る。 イザークが勝手に改造したこの玩具のリモコンは、本来ならアスランの秘部から生えているコードに繋がっているべきものだ。 だが、イザークはコードを残したままリモコンを切り取り、遠隔操作が可能になるように本体とリモコンに手を加えている。 柔らかい内壁を緩やかに掻き回すそれにびくびくと身体を震わせて、アスランは嫌だと首を振った。 「ゃ、イザ……ぁ…っ…止め…ッ」 「…本当は止めて欲しくないのだろう?大丈夫だ。わかっている」 くく、と喉を鳴らして妖艶な笑みを浮かべる彼に再び首を振ったアスランの自身を、イザークは軽く掴んだ後ぎゅっと握り込む。 「ひっ、ぁ…」 鋭く細い悲鳴が上がったことに目を細めて、彼はその力を緩めるが、痛め付けられたにも関わらず流す蜜の量を増やした自身を見て、その笑みは更に深まった。 たらりとだらし無く垂れる先走りに片手の指を絡め、片手は相変わらず自身を包む。 羞恥に顔を背けて涙を零すアスランの、苦しげに寄せられた眉と、伏せられた瞳を美しく見せる睫毛に征服心を駆られて、イザークは口角を上げた。 するりと自身を撫でながら手を離し、サイドテーブルの引き出しを開ける。 突然ガタリと響いた音にアスランは目蓋を押し上げ、細く長い棒とチューブを取り出している彼に気付いてその瞳を見開いた。 「ぁ、嫌…‥嫌、だ…駄目…イザッ…!」 その声にふっと柔らかな笑みを浮かべて、イザークは宥めるように彼の頬に口付ける。 優しいそれに小さく声を漏らした彼にくすりと笑い、そのまま唇をやんわりと啄んだ。 そして、イザークは身体を起こし、取り出したチューブの蓋を開けて掌に、五百円玉大の量の中身を押し出す。 チューブをテーブルの上に放置して、次に細長い棒を手に取った。 それに与えられるものの恐怖からか、アスランの身体がふるふると震える。 イザークはそちらを見下ろしながら、くちゃりと音を立ててチューブの中身を棒になすり付けた。 万遍なく塗りたくり、それをアスラン自身に近付ける。 未だ掌に付いている残滓を自身へ塗り付け、棒を先端の窪みに当てた。 「嫌…ゃめ…ッ」 「…動くと怪我をするぞ」 拒否を示すアスランに短く言い放ち、彼は細い尿道に棒を差し込んでいく。 痛いと喘ぎながら背中を反らせるアスランの瞳は恐怖に染まり、それを見つめるイザークを更に興奮させた。 奥まで届いているにも関わらず更に押し込めようとする彼に、もう入らないと訴えるアスランは愛おしい。 尿道を塞ぎ切ったそれをピンと弾くと、彼は狂おしい程に身を捩って声を上げた。 「ああッ!は…‥抜、け…っ、も…ゃ…」 無理矢理狭いそこを広げられ、感じていた痛みが激しい熱を伴って快感に変わっていく感覚に、アスランはまだ慣れていない。 チューブの中身の残滓を塗り付けられた自身は、その中に含まれている媚薬の成分のせいで、中も外も甘い疼きを覚えていた。 自然と揺れている自分の腰に彼は気付いておらず、イザークが含みのある笑みを浮かべていることも目に入っていない。 ただそこに触れて欲しいという思いに切り替わっていくことが、恐怖だった。 「ゃぁ…‥ぁ、イ…ザ…」 知らず、強請るような声が漏れてしまい、アスランは唇を噛み締める。 触れてもいないのに熱い吐息を吐き続ける彼をじっと見下ろす青い瞳は、暗がりの中でもその色彩を放っていた。 もどかしげに縛られた手首を捻り、身を捩る彼から目を離して、イザークは再びチューブを手に取る。 人差し指と中指を揃えた間の溝に沿う形で中身を押し出し、その指先をアスランの秘部に宛てがった。 突然、機械が疼く場所に触れて来たイザークのそれに肩を揺らし、少し虚ろになり始めた瞳で彼はそちらを見上げる。 玩具をしっかりと締め付けて離さないそこの入口を撫でながら、イザークは口角を上げた。 ゆっくりとした動きで二本揃えた指を蕾に差し込み、柔らかな粘膜を割り開く。 じんじんと指の皮膚から浸透してくる媚薬に少し眉を寄せながら、イザークはそれを内壁に塗り込めていった。 爪先にかつりと当たる機械を更に奥へと押せば、アスランが高く声を上げることなどお見通しだ。 「ゃあ…ッ、ぁ…熱‥いっ」 覚束なく揺らされていた腰の動きは、快感を求めて徐々に大胆になる。 その度に勃ち上がったアスラン自身が揺れ、細い棒はそれに合わせて中を刺激していた。 自分の指が、彼の身体の中へ埋まったり抜け出たりと繰り返しているのを見て、イザークは嘲笑を浮かべる。 アスランが腰を振ることによって、動かしていないはずの指が彼の体内を擦っているのだ。 ちゅぷちゅぷと響き始めた淫らな音に、彼は熱い吐息を零す。 「ぁっ、ぁ…っ、ん…ぁ…」 「…淫乱」 ぽつり、と熱っぽく耳元で囁かれ、アスランは違うと首を振った。 その様子にイザークは目を細め、脇に放ってあったリモコンに手を伸ばす。 棒でせき止められているというのに、蜜口から僅かな量の先走りを零すアスラン自身に掠めるように触れながら、最小にしてあった玩具の強さを最大に変えた。 一際大きくアスランの身体が波打ち、引き契れそうな程にイザークの指を締め付ける。 高く迸しる甘い嬌声にくつくつと笑ってリモコンから手を離し、イザークは纏わり付く内壁を払うように指を引き抜いて、自分自身を取り出した。 中を痛い程に掻き回す玩具に感じ入り、こちらに気付いていないアスランに薄く笑って、彼は先端を秘部に押し当てる。 突然入口を塞いだそれにようやく気付いたアスランが、首を振ろうとするのよりも早く、イザークは自身の挿入を始めた。 「ゃあっ、ぁ、ダメッ…イザァアッ!」 足を抱え上げて膝裏を持ち、彼はアスランの身体を折り曲げる。 浮き上がった腰の下に枕を入れて固定し、再び足を持ち直したイザークは、一気に根本まで自身を突き入れた。 「っ――――……!!」 先に中へ入っていた玩具が身体の奥を引き裂き、そんな痛みで射精感を感じた自分にアスランは泣きそうになる。 今流れている生理的なものではない涙を零しそうになりながら、あまりの衝撃に呼吸することを止めてしまった彼に気付いて、イザークはそっと彼自身を擦った。 同時に身体を重ねて優しく唇を合わせ、いつもするようにやんわりと啄んでいく。 優しく温かい口付けにふっと吐息を漏らし、思い出したかのように胸を大きく上下させ始めたアスランに微笑みかけて、イザークはゆっくりと身体を起こし、細い腰をがっちりと掴んだ。 「…狂いそうになるほど、気持ちよくしてやる」 サディスティックな彼の笑みに、感じる圧迫感と有り得ない箇所を掻き混ぜる機会に翻弄されているアスランは気付かない。 そのまま激しく身体を揺さ振り勢いよく何度も腰を打ち付けると、彼は背中をのけ反らせながら爪先まで固くし、強張ったその指で、揺さ振られるままに空を掻いた。 「あ!ぁ、ひ…っ、ひぃあッ、ゃ…ゃあッ」 そのまま立ち上がった自身を再び指で弾かれ、アスランは白濁を飛ばすことなく達する。 絶頂感に苛まれながらも、棒にせき止められているせいで少量の粘液を零すことしか出来ず、熱が逆流する苦しみに頬を濡らした。 びくびくと身体を震わせながら虚ろな瞳でこちらを見上げる彼の身体の奥、前立腺を玩具と突き上げで耐えず刺激しながら、イザークは彼自身を苦しめている棒を突然引き抜く。 「ぅあッ、ぁ、ぁあッ!」 同時に再度奥を突き上げてやれば、アスランは大きく声を上げて精を飛ばした。 びちゃびちゃと腹や胸に付いたそれを軽くなぞり、口元に運んで舌で舐める。 視界の端に映ったその光景を理解して、アスランは背中にぞくりと走るものを感じた。 それと共に薄れ行く意識を、未だに続く突き上げによって引き戻される。 熱を上げた秘肉に満足したように小さく息を詰めて、イザークは抜き差しの速度を速めた。 我慢し、苦しめられた後に迎えた絶頂は凄まじい快感を呼び起こし、更に与えられ続ける刺激にアスランの思考は止まっている。 ただ揺さ振られ、声を上げる彼の自身が再び硬くなり始めるまで、イザークは内壁に自身を擦り付けるような律動を繰り返した。 それによって彼自身の質量が一回り増し、呼応するようにアスランは身体を跳ねさせながら緩慢と自身を立ち上げさせる。 「あっ……ぁ、ん、は…イザ…ッ、イザ‥クッ」 「…っ、愛している…アスラン…」 玩具を奥に咥えているくせに、その言葉だけで更に奥へと熱を引き込もうとする粘膜に、イザークはくつくつと笑った。 あ、あ、と切ない喘ぎを漏らすアスランの身体の奥を鋭い角度で突き上げ、再び彼の分身を手に取って優しく擦る。 もう限界を越えているイザークの汗が、ぽたりと落ちてアスランのそれと混ざり合った。 一度大きく腰を引いてから、捩込むように勢い良く身体の中を突く。 「っ、く…」 一瞬びくりと背中を震わせたイザークはアスランの中に迸しりを放ち、そのまま余韻も残さずに萎えた自身を引き抜いた。 「ぁ…あっ…んぁ…っ」 中途半端に立ち上がった熱を放置され、それでも中を刺激する機械によってアスランは腰を振る。 自分の放った粘液が流れ出てくる秘部に指を伸ばして、イザークは微かに出ているコードの端を掴み、力任せに引っ張った。 卑猥な音と高い声を響かせながら、数時間振りに外へ現れた機械の電源を切り、それに付着している少量の血を舐め取る。 あまりの衝撃に瞳を見開いて小刻みに震えているアスランの唇を啄んで、イザークはその自身をぐちゅりと扱き始めた。 緩み切った蕾がひくつくのを感じながら、アスランは彼の手に自身を押し付けるようにして腰を揺らす。 イザークの瞳は興味を失ったかのように時折部屋の何処かへ向けられ、その手はただ事務的に動かされるだけだ。 熱が高まっていくのを感じながらも、何処か冷めていくのを感じて、アスランはイザークを見上げる。 霞む視界に捕らえた彼の表情があまりにもつまらなさそうで、アスランは涙を流した。 そして、そのまま彼の手に射精する。 虚しさを感じて目を閉じるアスランの両手を解放してから、イザークはシャワーを浴びる為にベッドを降りた。 所詮玩具だと思っていたのに、されるがままに己に従い、焦がれるような狂おしい翡翠の瞳で見つめられて、嘘の愛を吐く度に、イザークは自分の胸にちくりと走る何かを感じている。 纏っていた服を脱ぎシャワー室に入れば、先程アスランが達した時の表情で感じてしまい、熱を持つ自身が視界に入り悪態を吐いた。 「何故、この、俺が…!」 シャワーを浴び終えて部屋に戻っても、きっとアスランはいないだろう。 自分を自分で慰めながら、イザークはくっと顔を歪めた。 「次は、もっと酷くしてやる…」 湯がタイルを叩く音に混じって聞こえる泣き声に、彼はそう小さく呟いた。 END |
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後書き 最初はただの801(やまなしおちなしいみなし)だったのに何故こう…ストーリーがついてしまうのですか…!orz アスランはイザークが好き、みたいな風に感じられます。 何故二人がこういう関係になったのかは不明ですが、変態プレイが出来て満足です! 縛り系は詳しくないのでやりませんが、いつか尿道プレイをしてやろうと決意していました。 アスラン…すまない。 まな 07.06.07 |