裏切り、遮り


 ガイン、と響いた音と、ほぼ時を同じくして壁に鉛の塊が食い込む。後ろ手に縛られて上体をベッドに沈め、曝け出した下肢を高く上げる格好で頬をシーツに付けていたアスランは、その音にびくりと身体を強張らせた。呼吸を乱して静かに目を伏せる彼の様子をイザークは嘲笑い、自分の手の中にある重く硬い金属の塊を、先程まで指で翻弄していた彼の蕾に押し当てる。ひたりと宛がわれたその感触に目を見開き、アスランはぐっと後ろを振り返った。後何発、弾が込められているのかも知れないそれから、何とか逃れようと身を捩る。やめろ、と怒鳴る、上擦った声が部屋に響いたが、イザークは目を細くするだけで、その行為を止めようとはしなかった。人差し指は軽く引き金に引っ掛けたまま、押し当てていた銃口をアスランの身体の中に強く押し込んでいく。厚みのある金属の太さと、その長さにアスランは吐き気を感じて、悲鳴にも似た声を上げた。尖った照星によって、小さく悲痛な音を立てて繊細な秘部が裂け、温かな血液が冷たい金属に纏わり付く。撃たれたら確実に死んでしまう、という恐怖で身体は小刻みに震え、内壁は必要以上に、きつく銃身を締め付けた。傍目からは、アスランの身体が嬉しそうに銃を咥え込んでいるように見える。その様にイザークは、ははは、と声を上げて笑った。引き金から指を外してしっかりと銃把を握り、強弱をつけて銃身の抜き差しを繰り返す。付けられたばかりの傷を照星が抉り、アスランは痛みに身体を引き攣らせた。

「ひっ、ぅん、ん…ゃ、あ…ッ」

 嫌だ、やめろ、と時折切れ切れに訴えながら、彼はシーツに強く額と肩を押し付ける。思ったよりも深くまでのめり込み、身体の奥を犯すそれに、ぞくぞくと湧き上がる何かを感じた。殺されてしまうかもしれない、という恐怖を目の前にして、身体は徐々に熱を帯び始めている。
 イザークは目線の先に、しっかりと勃ち上がり蜜を垂らしているアスラン自身を見付けて目を細めた。後ろからそこに手を伸ばし、更に乱暴に中を擦り立てながら上体を屈める。血液によってぐちゃぐちゃと卑猥な音を響かせるアスランの項に痕を刻み、

「淫乱…俺を裏切り、嘲笑い、一人ぼっちにするのは楽しかったか?」

と低く囁き掛けた。違う、と叫ぶ彼の返答に顔を歪めて、銃身を全て中に押し込む。
 勢い良く中に入り込んだ銃口に声を漏らして、アスランはふるふると身体を震わせた。耳につく自分の荒い息と、熱を帯びた身体にどうしようもない苦しさを感じて、背中を大きく上下させる。

「ちがう‥イザ…俺は…」

「黙れ!」

「ひ―…っ!」

 それでも言葉を紡ごうとするアスランの自身を、イザークは握り潰してしまいそうな程に強く握り込んだ。痛みに悲鳴を上げて身を固くする彼の中から少し銃身を抜き、萎えかけた自身の全長を扱き立てる。

「今…貴様の命を握っているのはこの俺だ」

 すぐに先程の熱を思い出して自身を勃起させるアスランを鼻で笑い、内壁を擦りながら一気に銃身を引き抜いた。びくびく、と背筋をのけ反らせながら甘い声を発する彼の秘部へ、間髪容れずに自分自身を宛がう。イザークは銃把を握り直し、縛った腕の少し上、肩甲骨の間辺りへとその銃口を押し当て、そのまま血に塗れたアスランの中へ自身を挿入した。先程まで咥えていた銃身の硬さや太さとは比にならないくらい飲み込み易いそれを、蕾は奥へと誘うようにひくついて受け入れる。出血によって軽い貧血を起こし、一瞬意識を飛ばしていたアスランの中の傷を更に痛め付けながら、イザークはぐっと腰を押し付けた。途端、最奥に触れる自身の先端にぴくりと身体を震わせて、アスランは小さく彼の名前を呼ぶ。
 背中に触れる銃口は、体内の生温かさを保っていた。

「っ…俺は‥お前を…‥愛…してる…」

 切々と訴えるように放たれた言葉にイザークはきつく唇を噛み、黙れと叫んでから乱暴に腰を揺らし始めると同時に、押し当てていた銃口を離して脇に置く。アスランの背中にはくっきりと、銃口の痕が残っていた。目に見えて弛緩する身体に眉を顰め、両手でしっかりと腰を掴む。そして、自分の腰を揺らすタイミングと合わせてアスランの身体を揺さ振った。硬く尖った先端で内壁を刔り、滲み出る先走りと血液を混ぜ合わせるように中を掻き乱す。ぐちゃ、ぐちゃ、と沸き立つ音が行為の卑猥さを引き立たせ、アスランはシーツに頬を擦り付けて涙を拭った。

「あぁ…ッ、ん、ぁ、あー…、はっ」

「っ…」

 少し冷静さを取り戻して、イザークは腰の動きを緩める。耳に届く程激しい息を繰り返すアスランに目を細くし、先程とは違い中を探るように腰を動かした。内壁に隠された前立腺を見付けるためだ。
 奥まで自身を挿入したまま先端で蕾の中をゆっくりと探っていく度、くぷ、と小さな音を立てて鮮血が流れ出る。白い足を伝い落ち、膝裏まで跡を残してシーツに染み込むそれは、今までにないほど厭らしくイザークを誘った。ぬめる内壁を擦りながらようやく見付けた前立腺を何度も突き上げて、彼はアスランを追い詰める。腰を持ち直して狙いを定め、容赦なく勢いを付けて擦り上げた。

「ァアッ、ァ、あ!イザ…!そこ、ゃあ…ッ」

 全身を揺さ振られながら与えられる快感に、アスラン自身はたらたらと先走りを垂らして限界を訴えている。もう無理だ、と声を上げる彼の両肩を掴んで少し上体を屈め、イザークは再び乱暴に身体の中を突き上げた。肩に食い込む指が、腰を送るタイミングに合わせてアスランの身体を下にずらす為、より深くを犯すことが出来る。ぐりぐりとしこりを攻め立てられ、アスランは耐え切れずに背中を反らせながら白濁を放った。

「ひぁ…あーっ、アッ、ぁああッ!」

「…く‥っ」

 きつく締まる内壁はうねりを帯びてイザーク自身に纏わり付き、絞り上げるように締め付ける。それに促されるように彼は、アスランの中へ熱を吐き出した。とく、とく、と身体の中を満たしていくそれにぴくりと下肢を揺らしながら、アスランは徐々に意識を閉ざす。襲い掛かる睡魔を払い除ける気力はもうなく、ただ落ちていくしかなかった。
 弛緩した身体からずる、と音を立ててイザークが自身を引き抜いた時には、すでにアスランの意識はなく、支えを失った下肢は崩れ落ちる。拘束していた腕を解き、身体を反転させて仰向けにすると、イザークは互いの胸を重ねるようにして上に被さり、アスランの背中に腕を回して抱き締めた。片手には、シーツの上に転がっていた拳銃を握り締めている。それを自分のこめかみに当てて、彼は引き金を引いた。










「…馬鹿め、あれで最後だというのに」

 銃口から弾が放たれることはなく、彼の手から離れたそれは嫌な音を立てて床に落ちる。壁を撃った一発、あれが込められている最後の弾だったのだ。

「貴様を殺めることなど…どんなに恨んでいようとも、俺には出来ん」

 アスラン、と苦しげに名前を呼び、イザークは彼の頬を優しく撫でた。未だ乱れたままの鼓動は重なり、アスランの頬に残る涙の跡へと、イザークの涙が零れ落ちる。両腕で、意識のないアスランの身体を強く抱き締めながら、彼はしばらくの間涙を流していた。




END




後書き


二周年です皆様…!ありがとうございます。
これから三年目に入ります。
また来年も、こうして祝うことが出来るよう頑張りたいと思います。

今回のこの小説は、種後だと思っていただけるといいと思います。
暗くてすみません…(汗)
ですが、二人はちゃんと通じ合っております。

ここまでお付き合い下さりありがとうございました(礼)
無期限フリーに致しますので、よろしければどうぞお持ち下さいませ。
相互の方々には押し付けさせていただきますので、ご了承下さい。


まな
07.08.23


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