子ネタ集


1.
イザアスと子供01
└アスランさん視点

2.イザアスと子供02
└イザークさん視点

3.イザアスと子供03
└アスランさん視点

4.イザアスと子供04
└イザークさん視点
































イザアスと子供01


たまたま今日は休日で、たまたまイザークの親戚の夫婦が、何か不都合なことがあるらしくその娘をジュール家に預けに来ていて、そして俺はたまたまそこにお邪魔していた。
更にたまたま、当日になってエザリアさんに突然仕事が入ってしまい、俺とイザークの二人でその子の面倒を見ることになったのだ。
俺がここに居るのは、もうそろそろ追悼式典があるからだったのだけれど。

「イザ‥にぃ…」

「何だ?ライサ」

銀髪なのは家系なんだろうか、と言うよりもそれを証明していると言わんばかりのさらりとした銀髪の女の子は、名前をライサと言う。
イザークの腕に抱えられて、指をしゃぶっている彼女は、まだ二歳にもなっていないらしい。
イザークとは違い、少しだけ内側にカールしている髪の毛は、よく見ると黄色がかっているようにも思う。
その内、真っさらな色になるのだろうか。
穴が空きそうなほどにじっと、隣に座っている彼らを見つめていると、イザークが不意にこちらを向いた。
ライサも釣られて顔を向ける。
くりくりとした瞳は、空の色をしていた。

「…すまんな、アスラン」

「別に構わないさ。短期間だが、居候させてもらっている身だし…それに、」

一度言葉を区切ってライサに顔を近付けながら指を伸ばす、赤みを帯びた頬をぷにっと押すと、幼子独特の笑みを返された。
思わず頬が緩むのを自分でも感じる。

「…それに…小さい子とはあまり、会わないからな。何だか新鮮な感じだ。周りは皆、育ち過ぎている」

「……悪かったな、可愛いげが無くて」

「本当にな」

覚えたばかりの俺の名前を呟くのが可愛くて、小さい頬を指先で撫でる。
イザークと抱き締め合えないのは少し残念だが、言ってはやらない。
きっとこいつも一緒だから。


End


08.01.31 






























イザアスと子供02


腕にずしりと掛かる重みは、以前抱き上げた時よりも確実に増している。
子供の成長は早いのだなと思いながら、小さな口腔内に納まり切らなかったよだれが口端から垂れているのを、首に付けられたよだれ掛けで拭ってやった。
先程憎まれ口を叩いたきり、再びライサを見つめ続けるアスランをちらりと見遣る。
いつもは滅多に笑みを見せない奴が、事あるごとに微笑を見せる様子が目に付いて、ついそれを追っていた。
そう言う俺自身も、ライサが笑みを見せると自然と表情が緩むから不思議なものだ。
だが、そのしゃぶって濡れた指で俺のシャツを掴むのは止めろ。
濡れてしまったそこが気になって視線を落とすと、ライサはもう片方の短い手を仕切りに伸ばしてあうあうと何か訴えていた。

「アス…ゃー、アスラン!」

…どうやら、アスランの方に行きたいらしい。
ちら、と奴の顔を見れば、困ったような擽ったいような、それでいて少し、勝ったと言いたげな表情で見つめ返してくる。
おまけに腕まで伸ばしてきやがったから、仕方無しにそちらへライサを移した。
抱き慣れていないのか、何度か小さな身体を抱え直して胸に納める様をじっと見つめる。

「…温かいな、子供って」

「…俺なら、もっと温めてやれるぞ」

思わず口を突いて出た言葉に、俺自身が驚いた。
さっと、顔と視線を横に逸らせて、こちらを見ているだろう緑色の瞳から逃げる。

「…嫉妬、か。可愛いな」

クスクスと小さく笑う声と共に隣から聞こえた言葉に、反射的に舌打ちをした。

「…今さっき、可愛いげがないと言ったのは何処のどいつだ」


End


08.02.01 






























イザアスと子供03


腕に抱いてみて初めて、人は最初こんなにも軽いのかと実感した。
データでは知っているが、実際に持ってみたのは初めてだからだ。
じっとこちらを見上げて来たかと思えば、少し顔を反らして肩に頬を付ける様がとても可愛らしい。
イザークが小さい時はこんな感じだったのだろうかと思い、ちらりと彼奴の顔と腕の中の幼女の顔を見比べて見た。
…違うな。絶対に違う。
もっと憎たらしかったに違いないと思うと何となく気になって、再びイザークの顔を見る。
すると、俺がそちらを見ることを見越していたかのように、青い吊り目と目が合った。
ライサが、言葉になっているようでなっていない声を発している。

「…何を見ている」

「いや、お前の小さい頃は…どんな感じだったのだろうかと思っていただけだ」

気にしていない風に告げて、再びライサに視線を落とした。
余程気に入られたのか、彼女は俺に引っ付いたまま離れようとしない。
その様子に、また頬が緩んだ。
子供、良いかもしれない。
自分の子供を、腕に抱いてみたいと思ったのは初めてだった。
我が子は当たり前ながら半分俺の血を引くが、そのもう半分はやはり、愛しい者の血であるのがいい。
だが、イザークが産んでくれるはずも無かった。


End


08.02.02 






























イザアスと子供04


隣で、腕に俺が小さかった頃の容姿と似通った姿をしている幼子を抱いて、微笑を浮かべるアスランの姿が、嫌に目に付く。
もう少し紺色の髪の毛を長くすれば、こいつが母親だと言っても疑わぬ者が出てくるに違いない。
何と無く、こういうのも良いかもしれないと思って、ライサがアスランにじゃれ付く様をただ見ていた。
だが…それに応えるようにアスランがライサの小さな頭を撫で、額に唇を寄せると、どっと苛立ちが押し寄せて来る。

「…アスラン」

少し空いていた距離を詰め、名前を呼びながら顔を覗き込むように唇を重ねた。
…やはり、子供は必要無い。
こいつは俺だけの者で在れば良い。
そのうち、両家の存続の為に養子を取る事になるかもしれないが、それはまだまだ先の話だ。
今はまだ、

「…何だよ」

俺だけの貴様でいろ。
内心呟きながら、顔を離してじっとアスランを見遣る。
寄せられた眉に反し、次第に赤らむ頬が可愛く思えて、宥めるように再び唇を重ねた。
柔らかい感触を楽しむように軽く啄み、小さく音を立たせる。
ライサはその下で、指をしゃぶりながら…文字通り指を咥えて俺達を見上げていた。


End


08.02.05