圧迫する雲 心すらも押し潰して 白い壁にべたりと張り付き、懸命にしがみ付こうとしている指先がその塗装を剥がす。爪に入り込んだそれを見る余裕など無くて、アスランはただ冷たい壁に額を押し付けた。汗を吸った水色のアンダーが身体に吸い付いてくる感覚を、気にしていたのも随分前の話だ。捲くり上げられたアンダーの中から伝い下りるように、汗が背筋に沿って流れて行く。無意識に逃げようとする腰を、浅黒い手がしっかりと掴んで引き寄せていた。 「ぁっ、あ、や…ィア‥ッカぁ…ッ!」 「何、言ってんの。…今挿れたばっかだっつーの。」 言うそばからずるりと抜け出し、咎めるように叩き込まれた熱い肉芯に、引き締まったアスランの背中が反り返る。迸しる裏返った声に目を細めて、ディアッカは更に腰を押し付けた。彼の自身を必死に頬張り、包み込む内壁がひくりと戦慄く。何かを飲み込んだ時の喉の動きに似たそれに、引き込まれそうになったディアッカが笑った。 根本まで男を咥え込み、奥深くをその先端で開かれて、身体を震わせるアスランが可笑しくて堪らない。自分が愛する彼をアスランも愛し、目の前の憎き恋敵が彼に抱かれている事をディアッカは知っていた。彼がアスランを愛している事も知っている。その上でアスランが、深入りを恐れて自分を利用し、彼との間に距離を置いている事も。 「ん、ん、ふ…っ、ぅン…。」 先走りと唾液で濡らされた中をぬちぬちと掻き回せば、アンダーに包まれたままの肩が怯えたようにびくびくと震える。ディアッカの動き一つ一つが、少しずつ脳を焼き切って行くような感覚にアスランは襲われていた。あまりにも焦れったい、緩やかな腰使いであるにも関わらず、的確にしこりを捏られる。パタ、と床に散った先走りに気付くが、壁に縋り付くだけで精一杯な今の状況では、その熱をどうする事も出来なかった。背後で執拗に奥を嬲ってくるディアッカを肩越しに振り返るしか、アスランに術は無い。 「んッ、ディアッ…カ…っ…」 「何?」 「も、動け…ッ、き、つい。」 激しく動いてなどいないと言うのに、はっはっと獣のように息を乱してアスランは訴える。こうして抱いてみれば確かに彼にも性欲があるのだと、ディアッカはいつも、行為の度に思っていた。アスランから抱いてくれと訴える事など、自分には勿論、愛しい彼に対しても決して無い。アスランを見ていると、まるで自分と彼ががつがつしているような、そんな感覚に襲われるのだ。言葉を放った切り、心底怠そうに再び前を向いてしまった彼の腹部にするりと片手を這わせて、ディアッカはその欲望を探る。指先に触れたそれは硬く立ち上がっており、自らが流すものでその全長を濡らしていた。 「ぁっ、ッ‥ディア…」 「…本当さぁ、お前らって馬鹿だよな。」 「やぁ…っ、ぁ、何、いきなり…んッ‥」 ぬるつく自身をぐちゃぐちゃと擦られながらの言葉を上手く理解出来ずに、アスランが聞き返す。だがディアッカは何も言わず、不意に腰を引いてぐっと奥を突き上げた。身体の中を押し上げられる感覚にアスランの膝が震え、がくがくと笑う。その癖、熱く熟れた内壁は、硬い肉棒が抜け出る時も押し込まれる時もびくびくと戦慄いて、快感を貪る事に必死だ。 力強く腰を掴む手が無ければ、いつ崩れ落ちても可笑しく無い様子に眉を寄せて、ディアッカは一度腰の動きを止め、繋がる箇所を支点にしてアスランの身体を反転させる。快楽に溶けて濡れた翡翠色の瞳と目が合い、唾液でてらつく唇に思わず引き寄せられた。情事の色香に惑わされたような、それを否定しきれずに心の中で息を吐き出しながら小さく音を立てて啄む。アスランはそんな彼の思いを知ってか知らずか、ぼぉっとした様子でそれを受け入れていた。 ん、と微かに鳴らされた喉の音が聞こえると共に唇を離して、何も纏っていない足を片方持ち上げる。身長差からアスランにとってはきつい体勢となったが、ディアッカはお構い無しにもう片方の手で腰を掴んだ。背中を壁に押し付けられ、左足の爪先は辛うじて床に付いている状態で、ふくらはぎが吊ってしまいそうな痛みを覚えてアスランは顔を歪ませる。それさえも厭らしく目に映り、ディアッカは律動を再開させた。 「っ、ディ、アッカぁ…ッ、ぁ、ぁあ、ゃ、ぁッ。」 ほぼ真下からがつがつとしこりを突き上げられて、下腹部にぎゅう、と力がこもる。ディアッカの手が無ければ跳ねていただろう身体は、その手によって無理矢理そこに留めさせられ、愉悦を逃がす事が出来ず直に衝撃を受け取る羽目になった。前立腺を刺激され、かじり付くように自身を引き絞る内壁を、そのそばから振り払われてアスランは背中を反らせる。相変わらず壁に這わせられた指は、短い爪の先で白い塗料を削り取っていた。 その指、下方で壁を引っ掻く彼の指へと不意に視線を落として、ディアッカは唇から熱を持った息を吐き出す。甘く名前を呼ぶ声に耳を犯されているような気分になりながら、常よりかは幾分か高くなったそれを気に留めていた。再び名前を呼ばれた彼が視線を上げれば、先程も目に止まった瞳と鉢合う。溜まりに溜まった涙が頬を伝い落ちて行く様に口角を上げて、切なげに寄せられた眉の間に口付けた。 「はぁっ、ぁ…ん、ぅあッ、もッ…もう…!」 繰り返される叩き込むような腰使いに首を打ち振るい、髪で乾いた音を鳴らすと同時に触れている唇を離させる。びくびく、と身体を痙攣させて顎をのけ反らせるアスランの、無意識下での拒否を確かに感じてディアッカは目を細めた。 「…っ、は‥」 「ゃあッ、ん、ひあ‥ぁああ…ッ!」 そして要望に応えるように強く、強かに腰を打ち付けて指も届かないような奥深くに精を放つ。前立腺を刔り、体内でその質量を一瞬増した彼に押し出されるように、アスランも音を外した声を上げて達した。 (I love you,Yzak.) END |
後書き ディアアスを書いてしまいました…!! 結局二人ともイザークさんが好き、みたいなイザーク一人勝ち話ですみません。 イザークはアスランの想いに気付いていて、ディアッカと関係を持っている事も知っていてやきもきしていればいいんです。 でも、ディアッカの気持ちには気付いていない…報われないディアッカですみません… 最近何だかカッコいいアスランさんを書く事が多かったので、こういう、受!!なアスランさんも楽しかったです(笑) ディアアスは増やしたいコンテンツですが、その前にイザアスで書きたい話が多々あるのでそっちにも手を付けたいです。 まな 08.09.06 |