小ネタ集

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16.甘々01
└イザアス

17.甘々02
└イザアス

18.甘々03
└イザアス

19.ほのぼの
└イザアス/シリアス(?)かもしれません。

20.シリアス
└アスラン/シリアス
































甘々01


 愛してる、という言葉は決して出し惜しみするな。
 何度言ったとしても、その言葉が掠れる事は無い。
 何度言ったとしても、その言葉が本当に届く事は無い。
 だから、決して出し惜しみするな。
 俺は、何度でも貴様に告げる。視線を交わす度、吐息を交わす度、俺は何度でも貴様に愛していると告げる。


「愛してる、イザーク。おやすみ。」
 ソファに座り、じっとテレビを見つめ続ける恋人の耳元に、背もたれ越しに顔を近付けてアスランは囁いた。続いて、ちゅっと音を立てながら耳の後ろに口付けてから、屈めていた身体を起こす。背もたれに置いた手を離して寝室に向かおうとした彼に返された言葉は、あぁ、という低い声だけだった。その様子に彼は眉を顰めて、恋人の真っ直ぐ過ぎる銀髪をくんっと引っ張る。途端に上がる抗議の声と、彼の視線を占領していたテレビから、青い瞳を自分に向けさせられた事に満足し、アスランは微笑を浮かべた。髪を引かれた方のイザークは、その眉間に深く皺を刻んでいたが。
「何だ貴様、」
「愛してるって、言っただろう?早く言葉を返してくれないか。」
 文句を言おうとしていた声を遮るアスランの言葉と、振り返った先の目が笑っていない笑みに喉を詰まらせて、イザークは小さく息を吐き出す。その事にぴくりと眉を動かした恋人の首に腕を回し、髪を軽く掴んで引き寄せながら唇を重ね合わせた。
「…愛しているぞ、アスラン。おやすみ。俺も直ぐに行く。」
 目を閉じたイザークから、至近距離で囁くようにそっと吹き込まれた言葉に、アスランは満足そうに目を細める。愛してる、ともう一度呟き、唇を触れ合わせて、彼は今度こそ寝室に向かった。


End


08.04.02 






























前の甘々の続きです。
砂吐き注意です。


甘々02


 扉の開く空気音、それから小さく揺れるベッドに合わせて揺さ振られる身体。閉ざされていたはずの目蓋が暗闇の中で開くのが見えて、イザークは少し眉を寄せた。いつも、先に寝ると言ってベッドに潜った恋人を、自分が後から来る事で起こしてしまうのを彼は嫌っている。イザーク、と寝呆けた声で呼ばれるのは擽ったくもあるが、アスランは疲れているから先に眠りに就くのだ。
 自分も疲れていない訳では無いが、と思いながら、イザークは腕を伸ばして擦り寄って来る彼の頭を抱き込み、額にそっと唇を寄せる。濃紺の髪がそれを遮ったが、二人が気にする様子は無かった。
 アスランはイザークの腕に頭を乗せて目を閉じ、再び眠りの世界へ落ちて行こうとしている。
「…愛しているぞ」
 誘いに抗う事無く、すぅっと寝息を立てかけた彼の耳元に囁き掛けて、目を閉じたイザークの鼓膜を、ほとんど声になっていない、ただの息とも呼べるものが震わせた。その様が、酷く無防備でありながらも負けん気の強さを表しているようで、イザークはふっと口元を緩ませる。自分にだけ見せる寝顔、弛緩し切った身体、安堵しているかのようにゆっくりと脈打つその心音。その全てが彼にとっては愛おしく、アスランが言葉以上に彼を愛している証拠でもあった。愛していると再度言い返して、イザークも身体から力を抜く。
 そのまま二人で眠りに就いて、朝、目覚めるまで身を寄せ合った。


 何度言っても言い足りない。
 何度言っても不安になる。
 告げられる言葉に一時の安堵を覚えても、それはすぐに焦燥に変わる。
 身体を繋げ、熱く濡れた視線を交わし、言葉を告げ合う中にも、言い知れない不安がある。
 愛してる。
 愛してる。
 お前の耳にたこが出来ても、俺はずっと言い続ける。
 呆れられる程に、ずっと。
 愛してる。


End


愛してる、という言葉についての話でした。
もう1パターン書いてみようかなと思ってみたりしています。
これとは真逆の感じの話を。
こちらの話は、以前言った通りまなの感覚ですが、自分の反対にしてみるのも面白そうだなと思いまして(笑)

ちなみに、この話の最後のはアスランさんです。

08.04.05 






























甘々03


 イザークは、気付いているだろうか。俺が、いつも何かを抱いて眠っていることに。


 月に居た頃は、キラの家に泊まることも多かったし、一緒にベッドに潜ることもよくしていたから、彼が俺の抱き枕だった。それ以外の日は、人形を抱いて。父にプラントへ呼び戻された時からは、柔らかい枕やクッションがその代わりだった。おそらく、寂しかったのだろうと思う。キラや母と寝たことを思い出して、それを補うかのように何かを抱き締めて眠っていた。とにかく、人肌が欲しかったのだ。
 アカデミーに入って、軍人になってからもその癖は抜けず、俺は毎晩それを繰り返していた。今は、イザークの腕を抱いて眠るのが習慣になってしまっている。それをしないのは、彼の腕の中に納まっている時くらいだ。本当に、今もそう。イザークと彼の相棒の部屋で、俺は彼の腕の中で眠りに就こうとしていた。明日もまた、戦闘になるのだろうという思いと、以前は俺に温もりを与えてくれていたはずのキラが、今では敵なのだという事実が深く胸に突き刺さって、ベッドに入ってから三十分は経っているだろうにも関わらず、未だ眠れないでいる。
「……眠れないのか。」
「…あぁ。」
 突然声を掛けられて、イザークもまだ眠っていないのだということに気付いた。小さく言葉を返すと彼は目を開いて、暗闇に浮かび上がる青色の瞳でこちらを見つめてくる。
「眠らせてやる。」
 彼がこう言う時は、大概そのまま行為に持ち込まれていた。隣のベッドでディアッカが眠っているというのに、お構いなしだ。俺自身、その行為が嫌いだというわけでは無い。お互いに言葉を紡ぐのが下手な俺たちは、それによって感情を確認し合うことが可能だからだ。だが、欲しい温もりを、それで得られないことには気付いていた。ただ俺が望むのは、その人の体温に触れることであって、熱い情熱を分かち合うことではない。
「今日は‥いい。イザーク、先に眠ってくれ。」
 だから、そう言ったというのに、目の前の彼はなんだか不満そうだ。溜まっている、ということは無いと思う。昨夜も、一回したばかりだ。
「何だ…?」
 本当に疑問に思って問い掛けると、彼はぎゅっと俺の身体を抱き締めたまま黙り込んでしまった。痛いくらいに感じるその腕の強さに、思わず喉から声が漏れる。
「…イザーク、俺は大丈夫だ。」
 背中に片腕を回して、そこをぽんぽんと宥めるように叩き、片手で肩を押してイザークと少し身体を離した。顔を覗き込むと、きつく眉を寄せている彼と目が合う。どうしたんだ、とこちらが心配になってしまい問い掛けるが、返答は無かった。これ以上何を言えばいいのかわからず、俺も口をつぐむ。視線を下に逸らすと、指で顎を掬われた。そのまま再び視線を上に戻されて、じっと双眸で見つめられる。
「………。」
 何も言わない彼の瞳は、少し気まずそうでいて、何処か寂しげだ。そこで何となく、今自分が言うべき事を直感した。本当に可愛い奴だな、何て思ってしまったが、今それを言うのはこいつを怒らせてしまいそうだから止める。
「…お前がいて、良かった。」
「……唐突に、何だ貴様は。」
 背中から腕を放し、再びイザークの腕に縋り付いて目を閉じる。怪訝そうでありながら、当たり前だと言いたげな響きを含んだ物言いに、思わず口元が緩んだ。
 まだまだ眠気はやってこないが、この分ならいつもよりも早く眠れそうだった。これもイザークのお陰なのか、と、そこまで考えて、そんなことはないと否定してみる。それでも、傍で眠りたいと思えるのはこいつだけだと、そう主張する自分がいることも確かで、そんな、依存していると言っても過言ではない状況に息が漏れた。年齢はもう十六歳。俺は大人に分類されている。イザークは俺の一つ上だ。一年だけ、長く生きている。その一年が、どれだけ重いことなのかもわかってはいたのだが。
「おい、何を考えている。」
 頭上から降り注ぐ声は不機嫌そのものだ。腐っても軍人か、とつい皮肉に思ってしまいながら、小さく、別にとだけ答えた。腕から、腕に伝わる体温に酔いしれる。答えをはぐらかしても、珍しくイザークは怒らなかった。
「…今日は、眠れるかもしれない。」
 耳に届くくらいの声量で告げて、腕に頬を擦り寄せてみる。そうか、とだけ響いた声に笑みを浮かべて、必要もないのにあぁと答えてみる。そのまま静寂へと繋がった部屋の中に、再び声を拡散させたのはイザークだった。
「愛しているぞ、アスラン。おやすみ。」
「…あぁ、おやすみ。」
 本当に今日は早く眠れそうだ。イザークの腕が、その体温が、俺に安らぎを与えてくれる。


 きっともう、彼は気付いているはずだ。俺が、何かを抱えないと眠れないことに。


End


08.05.09 































ほのぼの


「アスラン。」
 好意を持たれているのはわかっていた。そして、俺が彼に惹かれているという事実も。
「…‥甘えたい症候群が出ているのか?」
「‥喧しい。」
 愚かだとは自分でもわかっていたが、それでも、こうして熱を共有しているのは相互関係が成り立っているからなのであり、俺達は互いの熱で互いを補っていた。何処に居ても、熱が足りないと感じればその身を寄せ合い、人目も憚らず抱擁を交わす。だからと言って、仲間が俺達をそういう仲だと、恋仲だと思う事は無かった。俺達がライバルであり、戦友、友人である事を皆知っているからだ。互いに支え合っている大きな存在なのだと、皆が理解していた。そのお陰もあって、俺達は人目を気にする必要が無い。だが、彼が内心で俺のことをどう想っているかは知っていた。それでも、こうして、身を寄せてくる彼の背中に腕を回し、銀が映える頭を撫でている自分は、酷く卑怯だ。
「…イザーク…」
 名前を呼んで、肩に顔を埋める。そうすれば、次は彼が自分の頭を撫でてくれた。慣れていない手つきで行われるそれは少し不器用で、にも関わらず安心を与えてくれる。
 この感情に名前を付ける事は出来なかった。何故なら自分には、もう愛している人が居たから。それが恋愛感情から来るものでは無くとも、イザークに愛していると告げる事は出来無かった。
 だから、俺達は恋仲では無い。
 だから、この仲間達の応対はとても有り難い。
 どれだけ待って貰わなければならないのかもわからないこの戦時下で、俺はこいつに待ってくれと言った。この戦闘が終わるまで、待っていてくれと。その言葉に、顔色一つ変えずにわかったと頷いた奴の気が知れない。俺が本当に、自分を愛する日が来るのかもわからないこの状況で。
 だが、一度だけ俺は過ちを犯した。どうしても、胸に沸き起こる気持ちに、歯止めが利かなくなったのだ。どうしても、したいと思う気持ちを止める事が出来ずに、俺はイザークの頬を両手で引き寄せて、触れ合うだけの長い口付けを送ってしまった事があった。あの時、唇に染み込んだ熱と、感触と、そして、顔を赤くして狼狽えた彼の表情が忘れられない。言葉に成り切れていない声を発しながら、口元を覆って瞳を泳がせていた彼に感じた愛おしさは、いったい何なのか。口付けてしまった事に対して、自分でも戸惑いを覚えていた。
 後悔を、していた。
「…そんな顔で見ても、キスはしないぞ。」
 たまに見せる物欲しそうなイザークの顔を、俺は見るのが嫌だった。口付けたいとか、手を繋ぎたいとか、そういう恋人同士の間に起こるべき感情や欲求を、ぶつけられるのは苦手だ。そのくせ、自分からするのはいいのだから、どれだけ我が儘なのかと少し嫌悪してしまう。それでも、あの表情で俺を見る彼は苦手だった。
「…ふん。」
 拗ねたように鼻を鳴らす彼の肩から顔を上げて、緩く頭を撫でる。こうすると、機嫌が直るのを俺は知っていた。
 本当に申し訳ない、イザーク。けれど、今一番近くに居て、安らぎを与えてくれるのはお前だけだから。
 決してキラの代わりではないお前を、愛していると言える日はいつ来るのだろうか。


End


08.06.04 































シリアス


 指先には硬いアスファルトの感触。

 あまりに力を込めすぎたせいで、繊細な薄い皮膚は破けて微かに血を滲ませている。誰の物か知れない靴で運ばれて来た細かな砂粒が、その傷に入り込んでいた。まるで、十本ある指の全てが、転んで膝小僧を擦りむいてしまったかのようになっている。

 常に二人分の重みを受けているせいで痛む、布で包まれているはずの膝。

 四つん這いになっている彼を、背後から鼻で笑う者が居た。


「っ…‥ッ!」
 びくりと大きく身体を震わせ、突然目を覚ましたアスランは、暗闇の中で瞳を見開いて目の前を見つめた。乱れた呼吸が整うのも待たずに、彼はゆっくりと自分の両手を、しっかりと握り締めていた布団から離して持ち上げる。暗闇の中にぼんやりと浮かび上がる両手を見つめ、その指先が怪我などしていない事を確認した。ぱた、と音を立ててベッドの上に両腕を下ろし、したしたと確かな瞬きを繰り返してから、ようやく一息吐く。目蓋を閉じた途端に押し寄せて来る疲労感に眉を顰めて、一度布団の中で寝返りを打った。

 近過ぎる地面の、暗く湿った、独特の臭いと、何処が痛いのかもわからなくなるほどぐちゃぐちゃになっていたあの記憶。

 闇から逃れるように目を伏せて、頬に感じるシーツの感触を追う彼の唇から薄く長く吐き出された息は、小刻みに震えている。自然と力のこもる眉間から力を抜こうとしながら、もぞもぞと身を捩って寝る体勢を整え直した。

 いつまでも俺を支配する、忌まわしいあの記憶。
 いっそ、


End


08.08.28