小ネタ集

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1.学パロ
└イザアス

2.夫婦
└イザアス

3.夫婦(?)
└大掃除

4.綺麗な空を見よう
└七夕

5.壊れた傘
└シリアス
































学パロ


いつもはそう見えないくせに、やはりO型なのだとわかる机。
バサバサと山になっている紙を掻き分けながら、アスランはぶつぶつと呟いた。

「何で俺がこんなことを…!!」

「仕方ないだろう。どうしても次の授業に使う資料が見つからないんだ」

その雑多な机はイザークのもので、次のアスランのクラスで行なわれる歴史の授業の資料を探しているらしい。
休み時間、イザークは教室から出てきたアスランを捕まえ、そのまま社会科職員室に連れてきてしまったのだ。
探すのを手伝え、と。

「もう!ちゃんと用意しておけよ!ジュール先生!?」

先生と言うところだけを特に力を籠め、皮肉を含めて言うアスランに、イザークはふっと笑みを零す。
その意地悪げな笑みに、一生懸命その資料とやらを探しているアスランが気付くことはなかった。
すっと柔らかな頬の近くに顔を寄せ、イザークは軽く口づける。
驚いたアスランが振り向けば、次は唇に直接唇を落とした。
ちゅっと吸い付くような音をたてて離れたそれに、わなわなとアスランの身体が震える。
何か言おうと口を開いたアスランだが、それに被せるように言ったイザークに遮られてしまった。

「昨日あんなに手伝ってやっただろう?」

突然の問い掛けに、アスランは何のことかわからず困惑したような表情を見せる。
何を…と呟いたアスランの耳朶に唇を寄せ、イザークは直接吹き込むように囁いた。

「イくのを」

「ッ…!?な、な…!!」

途端に真っ赤に染まった頬にまた口づけ、イザークは口をぱくぱくと開け閉めするアスランからさっと視線を外して資料を探す。
その資料は、存外早く見つかった。

「お、あったぞ。悪かったな、アスラン」

行こうかと微笑んだイザークに、アスランは一言。

「バカ!!!」

と言い放ち先に職員室を出て行ってしまった。
他に職員はいなかったために、誰にも見られることはなかったが、イザークはそのアスランの反応に笑みを零していたとか。


05.12.22 






























夫婦


カチコチと、アナログの時計が奏でる音を聞きながら、アスランはゆるゆると瞼を押し上げた。
アナログなのを好むイザークが置いたものだが、如何せん秒毎に音をたてるものは時間がずれやすいと、それを置いた張本人が言っていたのを思い出しながら、アスランの意識はだんだんと浮上してくる。
曝された肩に触れる空気を冷たく感じてシーツを引き寄せると同時に、いつもは在る筈の温もりがないことに気付いた。
慌てて手で探れば、皺の寄った冷たいシーツの感触。
がばっと身体を起こせば腰に鈍痛が走り、アスランはか細く呻いた。
急に覚醒した眼でもって時計を見れば、九時を少し回っている。
イザークの会社の定時は九時だ。
何も身に纏っていないが、気にしていられない。
とりあえずシーツを纏い、アスランはベッドを下りてリビングへ続く扉を開けた。

「イザーク!いるか!?行ったか!?イザーク!!」

焦って声を上げるが、返事はない。
そのことに安堵しつつ寂しさを感じ、アスランは寒いなと思いながらもそのままリビングの椅子に腰掛けた。

「何も言わずに行ったのかよ…」

ぼそりと呟いたそれを聞く者はなく、殺伐とした空気に溶けていく。
そんなことにすらもやもやとした何かが過り、アスランははぁ…と溜め息をついた。
仕事なのだから仕方がないんだと言い聞かせ、ふと机の上にある自分の携帯を手に取る。
新着メールが一件きていることを知り、アスランは緩慢な動作でそれを読むように携帯を操作した。
イザークからのメールだということに気付いた途端、翡翠が驚いたように見開かれ、指先の動きが速くなる。
その内容に機嫌が良くなったのか、くすりと零れたアスランの笑みは嬉しそうだ。

『先に出るが、貴様はまだ寝ていろよ。愛してる。』

ぱたんと携帯を閉じ、アスランは微かに頬を染め、バーカと言いながらシャワーを浴びに向かった。


05.12.22 






























夫婦(?)


大掃除、それは面倒臭く、だがいつかはやらなければいけないもの。
イザークとアスランも、今日は掃除に撤していた。
だが、窓のサッシを拭いていたアスランに、イザークは背後からぎゅうと抱きついている。

「イザーク…やりにくいんだが」

「別にいいだろう?寒いんだ」

すりすりと頬をアスランの背中にすりつけて、イザークはご満悦の様子だ。
掃除は大方終わり、あとは窓辺だけ。
確かにイザークにやることはなくなっていたが、アスランは諦めたように、だが確実にイザークを邪魔だと訴えていた。

「お前がやるって言い始めたんだろう!?早く終わらせたくないのか!?」

「あったかいな…お前」

「イザーク!!…もういい」

ひっつき虫になってしまったイザークをずるずると引き摺りながらアスランが移動していたのを、見た者はいない。


05.12.22 






























綺麗な空を見よう


「今年も曇りだね。七夕…」

バルコニーに出て俺たちは、宇宙を覆い隠す雲を眺めていた。
キラは隣で、残念だと言わんばかりに眉を寄せて拗ね顔をしている。

「…大丈夫だ。宇宙に雲はないから…二人を邪魔するものはないよ」

微笑を浮かべて呟いた俺に顔を向けて、それもそうだね。とキラ。
途端に元気になった様子に軽く笑えば、再び拗ねてしまった。
そして、突然鳴り響く俺の携帯が、静かに流れていた時を止める。

イザークからだ。

『来月、絶対に空けておけ』

とだけ書かれたメールに、満天に光る天の川の写真が添えられており、思わず口元が緩む。


わかってる…当たり前だろう?イザーク


後で返信しようと思いながら、訝しむようなキラの視線から逃れてバルコニーを後にした。


END


10分で書きました…っ(汗)
間に合わないかとすごく焦ったのですが、間に合ってよかったです。
出来たと思った途端に携帯の電源が切れたことは秘密です…(涙)

06.07.07 






























壊れた傘


雨…

もう、氷混じりのようにすら思える冷たいそれが、傘を打つ。

指を強く強く絡めて歩きたくて、それでも一つの傘に入っていたくて、傘を持たない彼奴の肩は濡れていた。
俺はなるべく、傘をそちらに傾けるようにしているけれど、あまり効果はないだろう。

ずっと前から、もうずっと前から、俺はお前に恋しているんだと、季節が変わるごとに思う。
時間が全てを変えていくのだとしても、これだけはそっとしておいてほしい。
お前を想う俺の気持ちも、お前から返される気持ちも、それから何よりも…今。
この一瞬一瞬の内に変わるものを、止めてほしい。
迫る時間が、俺を駆り立てるから。

でも、唇から漏れるのは白い息だけで、雨に流されて言葉になってはくれなかった。
好きだという想いが消えずに残り過ぎて、何も言えなかった。
川に沿って作られた、曲がりくねった堤防は、俺達にお似合いで。

こんなことは嘘だと、微笑んでほしかったのに。
何も言えずに押し黙り、涙さえも出てこない。
どうしてなんだと聞くことも出来ずに、冷たく強張る片手の指先を戦慄かせる。
動きにくいそれは、傘を持つことすらも拒んでいた。

発着場の目の前で足を止めれば、手を繋いでいるせいで、彼奴も自然と立ち止まる。
どうしたんだと瞳で問い掛けられて、そっと手を離した。
本当は、離したくなかったのだけど。
どうしても今、離さなければならないと思ったから。
これ以上、もうこれ以上繋いでいたら、泣いてしまいそうで。

最後の、強がりだった。


これから先、もし俺がお前以外を好きになっても、お前が俺以外を好きになっても、前に確かに感じた永遠を、忘れはしない。
永遠に一緒にいられるのだと感じたことを、忘れはしない。
永遠に、お前を愛していると感じたことを、忘れはしない。

傘から抜け出たお前に微笑みを向けて、先ほどまで繋いでいた手を緩く振る。
お前は少し、眉を寄せた。
それでもすぐに、表情を緩めて小さな笑みを返してくれる。

「…‥愛してる」

ようやく口から出た言葉はそれだけだったが、それで十分だった。
手に残る温かさは、ずっと消えないのではないだろうかと思えるほどで。
この気持ちに、嘘はなくて。
それだけで、寒い冬を越えられそうだった。


ただ、お前を好きだという気持ちは、身体に温かさをくれた。


END


後書き

ポルノさんに再び触発されました。
書いている間中ずっと、エンドレスリピートWinding Roadでした。

06.12.27